異次元の金融緩和で、日本は再生するか? 日銀短観から読み解くアベノミクスの行方(下)

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それ以降、これほどの高い山はやってきていません。2002年から2007年まで「戦後最長」と呼ばれる回復期がありましたが、山の高さがまったく違います。

需要が供給を上回っていた時期はごくわずか

もう少し詳しく見てみましょう。このグラフは、大企業、中堅企業、中小企業にわけられています。80年代後半のバブル期には、どの規模も潤っていましたが、90年代以降、中堅企業、中小企業はほとんどゼロを下回っているのです。大企業もバブル期ほどの山ではありませんが、海外で稼いでいることから、中堅や中小よりは上回っています。規模の小さい会社は、浮かばれない状態がずっと続いているのです。

では、バブル期の需給はどのように推移していたのでしょうか。これだけ景気が良かったのだから、需要の方が大きかったのではないかと思いませんか? 需給判断を示したグラフを見てみましょう(日銀短観:9ページ上の「国内での製商品・サービス需給判断」のグラフ参照)。

このデータを見ますと、バブル期のごく一部が若干の需要超過であり、それ以外はすべて供給過剰だったことが分かります。需要超過になっているのは、バブルの頃の極々短い期間であり、量もわずかだったのです。

価格に関しても同様です。仕入れ価格は上昇している時期が多々ありますが、販売価格はずっとゼロを下回っています。バブル期であっても、販売価格は下落傾向が続いていたのです。日本はもう、30年ほどデフレが続いていると言えます(日銀短観:9ページ下の「価格判断のグラフ」参照)。

つまり、あれほどの凄まじいバブル期であっても、需要超過になることはほとんどなく、価格も下落傾向が続いていたわけです。そういう点からも、いくら大胆な金融緩和を行って物価を上昇させようとしても、デフレ傾向を解消するのは難しいのではないかと思うのです。

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