フジ次期社長、亀山氏が語るベンチャー投資 フジテレビがベンチャー投資で狙うもの

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新しい知識、才能を取り込むにもスピードが重要

――その経験が、ベンチャーキャピタル事業に生きてくる?

メディアの新しい知識、新しい才能を取り込むにもスピードが重要だと常々感じていました。一緒に映画を作ってきたクリエーターの会社が、みるみるうちに成功を収めて大きくなっていくのを目の当たりにしてきたからです。

グリーやDeNAの成長の速さを見てもわかりますよね。5年ほど前に、グリーが営業利益700億円を稼ぎ出す会社になるとどのくらいの人が想定できていたでしょうか。月に1度の取締役会ではこの成長の速度を取り込むことはできません。

たとえば映画「海猿」では、水中撮影の技術はほぼ皆無の状態から始めました。人間が水中に潜っていられる時間を大きく変化させることはできませんから、どれだけ短時間で撮影できるかが肝になります。合わせて、CG(コンピュータグラフィックス)チームもどんどんスキルを伸ばしていきました。映画1本、3カ月間の製作期間でどんどんうまくなる。

2012年公開の4作目では、ジャンボジェット機の海上着水を映像化できるほどになりました。そのスキルを獲得するために必要となる費用は、フジが制作費として負担したものです。海猿の製作に加わってくれたCG会社は、この映画製作で獲得した技術を転用して、映画だけでなくゲーム製作など他社の仕事も次々と受注するようになりました。

社員数が増えて、フロアを拡張し、売り上げが拡大していく様子を横目に見ながら「出資という形で彼らと組んでいたら、映画製作のときだけでなく、彼らの成長を取り込むことができたのに」と感じています。

この視点に立つと、僕にとって映画製作で制作費を投じるのと、ベンチャーキャピタル事業は同じ。運営資金が足りなくて、やりたいことは頭の中にあるのに実現できていない会社に、“応援”資金を提供し、フジの既存事業とのシナジーを追求して一緒に成長していきたい。ファンド運用会社のプロの方々と伍して戦うなんて気は毛頭なくて、キャピタルゲインだけを求めるのであれば、僕が社長になる意味はないと思っています。

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