エネルギー危機に備え公的支出を拡大せよ−−ジェフリー・サックス コロンビア大学地球研究所所長

エネルギー価格の急騰が世界経済を直撃している。中東をはじめとしたいくつかの産油国は巨額の利益を得ているが、世界の大半の国は原油価格が1バレル当たり120ドルまで上昇し、石炭価格も2倍になるという空前の高騰に苦しんでいる。

潤沢で低廉なエネルギーがなくなったため、世界経済はあらゆる面で脅威を受けている。たとえば食品価格は原油価格の上昇と足並みをそろえて上昇しているが、その理由は生産コストが上昇したためであって、米国などの農業用地が食料生産からバイオエネルギー用の生産に転換したためではない。

原油高騰への手っ取り早い対応策は存在しない。現在の原油高は需給関係を反映したものだからだ。世界経済、とりわけ中国とインド、それにアジアの一部の国の経済は高成長を遂げており、その結果、電力と運輸用のエネルギーの需要が急激に高まっている。しかし、仮に原油、天然ガス、石炭の新たな鉱脈が発見されたとしても、簡単に需要の増加に対応することはできない。

古い油田が枯渇しつつあり、原油の供給は減少傾向にある。では石炭はどうか。供給量は多く、液化燃料への転換も可能だ。しかし、石炭は代替エネルギーとして十分ではない。なぜなら供給に限界があり、石炭はエネルギー単位当たり大量の二酸化炭素を排出するため、気候変動を引き起こす危険性があるからだ。

発展途上国が急速な経済成長を享受し、先進国が景気後退に陥らないためには、新エネルギー技術の開発が急務である。具体的には、化石燃料に代わる低コストの代替エネルギーの開発、エネルギー効率の改善、二酸化酸素の排出量の削減を目標にすべきである。

長期的に最も期待が持てるのは、太陽エネルギー技術の開発である。地球に到達する太陽光線の総量は、世界の商業用エネルギーの使用量の1000倍に達している。すなわち大量の太陽光線を受けている砂漠などを利用することで、世界に大量の電力を供給することができるのだ。

たとえば米国のモハベ砂漠を利用するだけで、米国の電力必要量の半分以上を供給することができる。北アフリカに太陽エネルギー発電所を建設すれば、西ヨーロッパに電力を供給することができる。サハラ砂漠の南にあるサヘルで太陽発電所を建設すれば、西アフリカ、東アフリカ、中央アフリカの大半の地域に電力を供給することができる。

おそらくエネルギー効率を改善する技術で最も期待できるのは自動車の“プラグイン・ハイブリッド技術”だろう。この技術が開発されれば、新車の燃料効率を3倍高めることができるだろう。これは、毎晩、家庭の電気のコンセントを使って充電したバッテリーで自動車が走行し、ガソリン・エンジンをバッテリーのバックアップとして利用するというものだ。米GM(ゼネラル・モーターズ)は2010年までに初期の開発を終えるという。

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