日銀は実質的に金融政策を変更している 金融緩和の目標に変化はないが達成は困難

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日銀は実質的に金融政策を変更しているのではないか(撮影:大隅智洋)

日銀は9月30日、「当面の長期国債等の買入れの運営について」を発表した。これは9月20・21日の金融政策決定会合で決定した「金融緩和強化のための新しい枠組み:『長短金利操作付き量的・質的金融緩和』」に対応したものである。

主な内容は、新たに打ち出された「イールドカーブ・コントロール」政策で掲げた金融調節目標である、10年国債利回りが「概ね0%」で推移させるために、長期債の購入額を減額するというものだ。

問題は「金融市場の調節」の目標が達成可能かどうか

具体的には1回あたりの国債購入額を、「5年超10年以下」で200億円減額、「10年超25年以下」と「25年超」をそれぞれ100億円減額するというものである。国債購入は月に8~10回実施するとしているので、月間では約2000億円、年間で約2兆円の国債購入額減額となる計算だ。

現在日銀はマネタリーベースが年間80兆円程度増加するように国債購入を行っているので、国債購入額の減額はマネタリーベース増額ペースを落とすことになるので、金融引き締めになるという批判も出てきている。

しかし、7月の金融政策決定会合でETF(上場投資信託)の買い入れ額を3.3兆円から6兆円へと拡大しているので、「マネタリーベースが、年間約80兆円に相当するペースで増加する」ことには大きな変化はないといえる。

問題は、「マネタリーベースが、年間約80兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う」という目標が達成可能なのかという点である。

先週末時点での10年国債利回りは-0.085%である。

こうした状況下で、減額するとはいえ、長期国債の利回り低下を促す国債購入で「概ね0%」で推移させるという「イールドカーブ・コントロール」政策の目標を達成するというのは理にかなわないものだ。

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