広告で「契約のリスク」を見破れ! 落とし穴は小さな文字で書かれている

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おわかりになっただろうか。正解は、上の物件は瑕疵担保責任期間がない可能性もあり、下の物件は瑕疵担保責任期間が2年間と推測できるのだ。

売り主によって、瑕疵担保責任期間は変わる!

この違いは、売主が不動産業者か個人かによる。売主が不動産業者の場合は、引き渡しの日から最低2年間は瑕疵担保責任を負わなければならない。仮にこれが新築住宅になれば、基本構造部などにつき、10年間の瑕疵担保責任を負わねばならないのだ。

ところが、売主が個人である場合には、この瑕疵担保責任を負わなくてもいい、つまり免責とすることも、当事者間で合意すれば、可能である。買主からすれば、引き渡した後は何があっても一切責任を負わないという売主から物件を購入することは、不安が残るものだ。したがって、個人が売主である場合の売買契約においては、そのあたりの責任の所在や期間を明確にする必要がある。

では、売主が不動産業者か個人かは、どこを見れば判断できるのだろうか。これを完全に見極めることは困難だが、推測できるのが「現況」の部分である。
先ほどの上の広告は、「現況」が「居住中」とある。実は個人が売り主の場合、居住中であることが非常に多い。売却した資金を次の買い替えに充当する場合が多いためだ。

一方、売主が不動産会社の場合、下の広告のようにほとんどのケースにおいて販売直前に新規リフォームを行っているのが特徴だ。直前にリフォームしている物件は、保証期間の長い物件である可能性が高いといえるのである。

今回は、広告の細かいところに掘られている大きな落とし穴について解説した。本連載の最終回となる次回は、将来、何らかの事情でマイホームを売却しなければならなくなった際に、大幅に値下がりしてしまうリスクの見分け方を解説していきたい。

高橋 正典 不動産コンサルタント

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たかはし まさのり

株式会社バイヤーズスタイル代表取締役。宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー、国土交通大臣登録証明事業不動産コンサルティング技能登録者。

1970年東京生まれ。従来の日本の不動産業界の慣習を変え、より顧客に寄り添う「エージェント(代理人)ビジネス」にシフトさせるべく、株式会社バイヤーズスタイルを設立。顧客の物件の資産価値向上のため、業界で初めてすべての取扱い物件に「住宅履歴書」を導入。一般的に売りづらいとされる築年数の古い中古住宅の売買に精通し、顧客から厚い信頼を得ている。

さらに、一つひとつの中古住宅(建物)を正しく評価し、流通させるため「売却の窓口R」を運営し、その加盟店は全国に広がっている。不動産流通の現場を最も知る不動産コンサルタントとして、各種メディア・媒体等においての寄稿やコラム等多数。一方で、一般社団法人相続支援士協会の理事を務めており、相続問題を始めとする家族の諸問題に造詣が深い。自身も30歳で二世帯住宅を建て、その後父親を看取った経験から、後悔のない親とのかかわり方を提唱している。著書に『実家の処分で困らないために今すぐ知っておきたいこと』(かんき出版)などがある。

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