ドイツ銀行の苦境鮮明、資金引き揚げ報道も 連邦選挙控え、救済には議員の抵抗強く 

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 9月29日、ドイツ銀行(写真)を取り巻く環境が厳しさを増している。2013年12月撮影(2016年 ロイター/Luke MacGregor)

[ベルリン 29日 ロイター] - ドイツ銀行<DBKGn.DE>を取り巻く環境が厳しさを増している。モーゲージ担保証券(MBS)の不正販売問題で米司法省から巨額の制裁金支払いを求められたことに端を発する財務不安から公的支援の観測も浮上しているが、連邦選挙を来年に控え、議員は不人気な銀行救済に反対の姿勢を強めている。

またブルームバーグは29日、ドイツ銀行とデリバティブ決済を行なうファンドの一部が余剰キャッシュとポジションを同行から引き揚げたと報じた。

これを嫌気し、米国株式市場でドイツ銀の米預託証券(ADR)<DB.N>は大商いのなか8%超急落し、最安値を更新した。

ドイツ銀行の広報担当は、トレーディング顧客の大半は同社の安定的な財務状況や現在のマクロ経済状況などを理解していると確信しているとコメント。不安払しょくに努めた。

一方、ドイツで連立政権の一角を占めるバイエルン州の保守政党キリスト教社会同盟(CSU)のハンス・ミヒャエルバッハ議員は、政府は経営難の銀行への支援は行わないと述べた。

メルケル独首相はこの日、ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁と会談した。来年の連邦選挙を控え、メルケル氏の支持率は寛容な難民政策が国民の反発を招き、急低下している。昨今の金融危機は自力で乗り越えたドイツ銀行だが、公的救済を余儀なくされる事態となれば、ドイツの指導者として金融危機を乗り切ったとのメルケル氏の高い評判に疑問符が付きかねない。

こうした事情を背景に、ドイツ政府はすでに、納税者による銀行救済を計画しているとの見方を強く否定している。

また金融危機時に支援を受けたコメルツ銀行<CBKG.DE>は、正社員の2割以上に当たる9600人の人員削減と当面の配当支払い停止を発表した。これを嫌気し同行株価は3.1%下落。ドイツのクセトラDAX指数<.GDAXI>の構成銘柄の中で最も大きく落ち込んだ。

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