「会社は学校の延長」は、正しい教え方か?

新卒採用の季節に振り返りたい、日本の雇用慣行の変遷史

「新卒一括採用」は、どこまで日本固有か

著者:與那覇潤(歴史学者、愛知県立大学准教授) 撮影:今井康一

毎年のことではあるが、4月1日を境として、多くの若者たちが大学に足を踏み入れるのと同時に、やはり多数の卒業者たちが、企業へと巣立ってゆく。あたかも年に一度だけ、所属組織のメンバーをそろって入れ替える「民族大移動」の季節が来るかのようだ。

日本に特殊な雇用慣行とも呼ばれ、近年ではむしろ批判的に言及されることの多くなった、いわゆる新卒一括採用の風景である。

もっとも、特定のエリート大学に企業がリクルーターを派遣して、卒業と同時に採用するキャンパスリクルートメントの制度は米国にもあり、英国でも大企業の場合は、やはり大学の新規卒業者を定期採用する慣行があるらしい。

つまり、高いキャリアや専門的な技能を有する人材を確保するために、新卒者を求めて大学(院)に企業がアプローチすること自体は、必ずしも珍しくない。

逆にいうと日本の場合は、英米ではごく一部のエグゼクティヴやスペシャリストに限定されている、「学校を出てから間断なく企業へと移動する」ライフコースが、一般的な事務職や高卒者・中卒者も含めて、労働者のほぼ全階層を覆っている点が特殊だ。

それは広範な国民に「職場」というアイデンティティを供給する一方で、一回でも移動に失敗して所属する場所(学校・企業)がなくなると、「浪人」として白眼視されがちな社会を作ってきた。

次ページ最初は「エリート限定」だった、戦前日本の新卒採用
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