物価上昇2%達成で、日銀政策委員に温度差 展望リポートの記述に2人の委員が反対

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見通しのバラツキはどこまで収れんするのか

また、1.9%という中央値では見通しの最大値と最小値が除かれている点も考慮する必要ある。展望リポートによれば、最大値が2.3%で最小値は0.8%とある。今回、反対意見を出した木内委員は4月4日の会合でも「2年程度の期間を念頭に置いて」という表現の削除を唯一提案しているだけに、0.8%という最も保守的な見通しを出したのは同委員とみられる。そして、中央値を取るうえで一番下の見通しである0.9%を出したのが同じく反対意見を出した佐藤委員だろう。

 一方、最大値の2.3%が「遅くとも2年で達成しなければならない」と述べている岩田規久男副総裁で、その次に高い2.2%が黒田総裁とみられる。日銀プロパーで岩田氏とともに3月から副総裁に就任した中曽宏氏は、国会の場で2年で達成できるのかと問われ「必ずしも2年でとは言い難い」と答えており、中央値の1.9%というのは中曽副総裁の見通しなのかもしれない。

展望リポートの数字から考えられる委員の見通しは以上だが、いずれにしろ、2%の物価目標の達成時期に委員の間でかなりの温度差があることは明確になった。各委員の見通しに幅があることについて、黒田総裁は「それぞれの委員の日本経済の見通しが違っていただけ。ある程度のバラツキは常にありうる」と述べた。

今後、前例のない大規模な金融緩和を推し進める中、物価見通しのバラツキがどこまで収れんするのか。また、委員の見通しの中央値が低下することはないのか。今回の見通しの中間評価は7月に行われる。政策委員にとって、「2年で2%」という大目標と自身の見通しとの距離感が問われる難しい局面が続くことになる。

井下 健悟 東洋経済 記者

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いのした けんご / Kengo Inoshita

食品、自動車、通信、電力、金融業界の業界担当、東洋経済オンライン編集部、週刊東洋経済編集部などを経て、2023年4月より東洋経済オンライン編集長。

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