たった1回のTV討論会で大統領は決まらない 日本人が知らなすぎる「米大統領選の真実」

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そして次回の討論会は環境も変わる。今回は誰が見ても、ヒラリー支持を鮮明にしているNBCが主催だ。次回(10月9日、ワシントン大学)は比較的ニュートラルと言われるCNNとABCの共催。一般の人からの質問もある。また最終回(10月19日、ネバダ大学)は、明らかに共和党に近いFOXが主催する。

この順番はどちらというとトランプにはありがたい。さらにもし選挙管理委員会が次の討論会に「第三政党」であるゲーリー・ジョンソンの参加を認めると、トランプには追い風になるだろう(第三政党の候補者の参加は、今後の支持率をみて、選管が決める) 。

オバマを除き、例外なくあてはまるジンクスとは?

そしてもう一つ、民主党、共和党に関係なく、メディアが触れない大統領選の重要なジンクスを紹介したい。

1976年のカーター(民主党)以後、一人の例外を除き、上院議員経験者は、大統領選で勝てなくなった(=マケイン<2008年>、ケリー<2004年) ゴア<2000年、副大統領の前は上院議員>、ドール<1996年>)。それ以前、トルーマンからニクソンまでの戦後の大統領は、軍人だったアイゼンハワーを除き、全員が上院出身者だった。つまり、その頃までは、上院議員は大統領へのステップだった(=トルーマン ケネディ ジョンソン ニクソン)。   

ところが、ウォーターゲート事件でのニクソン政権の終わり方が酷かったからだろうか、“ワシントン”を信用しなくなった?アメリカ人は、それ以後上院議員経験者ではなく、州知事を大統領に選ぶようになった(カーター レーガン ビル・クリントン G・W・ブッシュ)。例外はオバマだ。

彗星のごとく突如現れ、上院をステップに、あっという間に大統領になったオバマ。個人的には、ホワイトハウスの主として8年、上院議員を8年勤めたヒラリーが、特別だったオバマの勢いを踏襲する可能性はほとんど無いと見ている。

一方で、知事どころか政治経験が全くないトランプ。新鮮であると同時に不安要素もそのままだ。ならば残りの2回の討論でトランプは過去の大統領選のように反攻できるのか。

別の角度でみると、最重要であるオハイオ州やフロリダ州で、ヒラリーはトランプのネガテイブ広告に200億円を使っている。重要州に配置した人員やオフィスの数のトランプのざっと5倍だ。それでも討論会の前、それらの州でヒラリーは接戦や逆転を余儀なくされた。

もしこの討論会の勝利を受けても接戦が続くようなら、その時は自ずと選挙戦の答えは見えてくる‥と言えるのではないか。

滝澤 伯文 CME・CBOTストラテジスト

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たきざわ おさふみ / Osahumi Takizawa

アメリカ・シカゴ在住。1988年日興證券入社後、1993年日興インターナショナルシカゴ、1997年日興インターナショナルNY本社勤務。その後、1999年米国CITIグループNY本社へ転籍。傘下のソロモンスミスバーニーシカゴに転勤。CBOTの会員に復帰。2002年CITI退社後、オコーナー社、FORTIS(現在のABNアムロ)、HFT最大手Knight証券を経て現在はWEDBUSH傘下で、米国の金融市場、ならびに米国の政治動向を日系大手金融機関と大手ヘッジファンドに提供。市場商品での専門は、米国債先物・オプション 米株先物 VIXなど、シカゴの先物市場商品全般。

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