ニトリが都心百貨店への出店を加速するワケ 銀座・上野に続き新宿・池袋も、課題は物流

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都心店は店舗当たりの面積が小さく、在庫を多く置けないため、多頻度配送が必要となる。しかも、店舗によって大型家具の構成比率が高かったり、インテリア用品の構成比率が高かったりする。複数店をまとめて配送することが難しく、物流の効率が悪くなってしまう。

こうした物流増に対応するため、埼玉県幸手市に2018年稼動予定で物流センターを建築中だが、それまでの間、都心店の効率性をいかに高めていくかが今後の課題だ。

低価格ブランドを投入

価格戦略について白井俊之社長は、「当初より価格を下げて売るものも出てくる」と見込む。最近の円高で輸入家具の仕入れコストは低下傾向にある。同業他社が値下げ攻勢を仕掛けてくる可能性は高い。競合環境、顧客の志向を見極め、価格戦略は柔軟に対応していく考えだ。

積極的な値下げは検討していないが、9月には低価格ブランド「DAY Value」を投入した。「初めてでもカラーコーディネートを安価に楽しめる」をコンセプトに、まず90店での展開を開始。2017年秋からは「&Style」という、品質重視の中価格帯ブランドも始める予定だ。

背景には、客の買い上げ点数が伸びていないという課題がある。低価格帯ブランドを拡充することで、従来からのニトリの中心顧客層に対して、コストパフォーマンスの良さを改めて訴求。そのうえで、やや高めの商品を増やして、客単価を上げようという戦略だ。

9月27日の決算説明会で話す似鳥昭雄会長(記者撮影)

似鳥会長は今後の景気動向について「賃金が上がっていない。消費者は節約をどんどんしている。景気が悪いときがニトリのチャンスと見て、シェアを広げていきたい」と語る。

ニトリの2017年2月期上期(2016年3~8月期)決算は好調だった。売上高は前年同期比15%増の2547億円、営業利益は同34%増の491億円と大幅に伸びた。好調の要因はホームファッション用品の牽引だ。接触冷感機能を持つ「Nクール」寝具、マットレスの「Nスリープ」シリーズといった自社開発商品が順調に伸びた。

今2017年2月期通期については、期初に発表した売上高5000億円(前期比9.1%増)、営業利益790億円(同8.2%増)の計画を据え置いている。上期の営業利益は期初計画の395億円に比べ、100億円近く上回ったにもかかわらずだ。

似鳥会長が下期の外部消費環境を厳しめに見ていることに加え、下期に店舗改装を一段と積極化するからだが、この業績は十分達成可能だろう。実現すれば、ニトリは30期連続増収増益となる。そして来期のさらなる連続記録更新に向けて、店舗投資を着々と続けられるところにニトリの強さがある。

菊地 悠人 東洋経済 記者

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きくち ゆうと / Yuto Kikuchi

早稲田大学卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者を経て2017年10月から東洋経済オンライン編集部。2020年7月よりIT・ゲーム業界の担当記者に。

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