貧困者を救済するには、何をするべきなのか 激論!鈴木大介×「失職女子」大和彩<後編>

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鈴木:苦しすぎますね……。自分ではどうしようもできない心の動きを「気の持ちよう」と片付けるのは、とても残酷です。でも気の持ちようって、まったくの間違いではないんです。「心のコントロールの仕方の問題」という意味ですから。

では、どうしたらコントロールできるのか? 虐待のことがフラッシュバックするのは、パソコンにたとえるとその記憶のアプリがずっと動いている状態です。睡眠中も、フル稼働している。僕も、嫌いな人のことを考えるアプリだけならまだしも、複数のアプリが同時に動いています。そうなると情報量が多すぎて光や音すらも耐えられなくなるから、真っ暗にして耳栓をしてジッとするしかない。

大和:耳栓は、私にとっても必須です。

「働けない」を「働ける」に変える3ステップ

鈴木:ですよね。一つひとつ情報を遮断して、アプリをシャットダウンしないといけません。そう考えると、生活保護もひとつのシャットダウンだとわかります。明日の支払いや今日の食費への不安というアプリを保護費によってひとまず止めることで、ようやくほかのアプリのシャットダウンに取り掛かれる。

その次のステップが、立ち上げたくないアプリを立ち上げない、そして複数のアプリが立ち上がらないようにする“環境調整”です。それによってストレスの原因となる要素を調整してストレスを軽減し、最後にダメージを受けた脳を“再発達させるためのケア”。……単純に言いますが、この3つのステップが貧困リスクを下げ、“働けない”人を“働ける”に変えるための段取りだと思うんです。

大和:そのための具体的な方法はあるのでしょうか? 私と同じような背景を持つ人の多くは、その方法をのどから手が出るほど欲しがっていると思うんです。

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