丸井は「百貨店」?それとも「カード会社」か? 売り場作りとビジネスモデルを大改革中

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縮小

――博多マルイでは、客からの意見で入居するテナントのロゴまで変えたと聞いた。

有楽町マルイの時点では、通路を広く取りましょう、エスカレーター脇に休憩用のソファを置きましょう、といった空間形成においてニーズを反映させることができた。だが、商品カテゴリやショップの構成、品ぞろえなど商売の根幹に関わる部分では、「そこまでは言われたくありません」と思ってしまっていた。

老舗だし店「味の兵四郎」は客からの意見で、出店するテナントのロゴまで変えた

ただ、商業施設では空間よりも圧倒的にコンテンツの方が重要だ。博多マルイは開業に至るまで、延べ1万5000人のお客様と合計600もの会議をして、出店する老舗だし店のロゴや、商品パッケージまで刷新するなど、テナントのブランディングにまで踏み込んで一緒に考えた。

その結果、歴代最高レベルの開業時入店客数とカード新規発行枚数を記録できた。これは、一朝一夕で他社が真似できることではない。

「ヤングファッションのマルイ」は今や昔

――博多マルイでは衣料品の比率を3割まで大幅に削減した。衣料品の縮小はかなり進んでいる。

お客様からは、2007年ごろからすでに、衣料品偏重の品ぞろえに対する不満が出てきていた。昔は店内が服ばかりだったことで喜ばれたのに、いつのまにか逆転して「服、服、服。どこまでいっても服で、息苦しくてたまらない。どうにかしてくれないか」と言われるようになった。

博多マルイでは「コト消費」の場として、工作スペースも備えている

「それでは何がいいのですか」と聞いたときに浮上したのが飲食だった。しかし、「消化仕入れ」モデルだと、仕入れられないものを扱うのは難しかった。もう一つ浮上したのは雑貨で、これなら消化仕入れで対応できると、(PB商品の)「ラクチンきれいパンプス」を強化するなどして、雑貨比率を高めていった。

加えて、リーマンショック後の2009年頃に、必然的にファッションを減らさざるを得ない事態に直面した。不況の煽りを受けて、数百店単位でアパレルのお取引先が撤退。かなり売り場が空いてしまったのだ。そこに、飲食や雑貨、気軽に買える低単価のアパレルなどを誘致した。すると、減少が続いていた客数は改善した。

ところが、当然ながら利益は減ってしまった。衣料品は単価が高く、かつ利幅の厚い商材。鞄や靴の粗利率は衣料品に次ぐ高さだが、手芸用品や文房具、本などは非常に低い。ここで、われわれはジレンマに陥った。お客様のニーズに応えなければいずれ利益は減るけれども、応えても利益は減ってしまうということだ。

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