本物のリベラルアーツを日本人は知らない
リベラルアーツとは何か(下)

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日本からの学生は減るばかり

私は、娘が成人するまで、「日本が世界でいちばん優れている」「日本人が世界でいちばん優れている」と教えたことは、一度もない。そんなことは言えるわけがない。私たちは、どれだけ、ギリシャ文明、ローマ文明、西欧文明、そしてアメリカ文明および中華文明を知っているというのだろうか?

祖国を離れ、多くの外国人の中で暮らす。これこそが、祖国をいちばん知る方法だ。そうして初めて、日本という国と日本人が何なのか、客観的に見ることができる。国内にいると、すべての事象にバイアスがかかり、教育はもちろん、報道、社会の雰囲気などに支配され、日本という国と日本人について考えることを忘れてしまう。

現在、世界の多くの大学は、世界中から留学生を集めるため、世界各地で説明会を開いている。また、卒業生やその父兄との懇親会も積極的に開いている。特に、アメリカの大学は、世界がグローバル化する以前から、こうした活動に積極的だ。

娘が卒業したベイツ・カレッジも、この4月13日に、東京で卒業生と父兄を招いたレセプションを開いたので、私も家内と娘と出席した。

「ベイツ・カレッジ」のレセプションでの、ビデオ、パワポによる学校説明のプレゼン

この日は、メイン州のキャンパスから、パメラ・ベイカー教育担当副学長とサラ・ピアソン募金・校友担当副学長がやって来て、大学の現状についてのプレゼンが行われた。

「現在、ベイツには世界71カ国から留学生が来ています。しかし、今後、さらに増やしていきたい」と、パメラ副学長。プレゼンの後は、再会した卒業生や父兄たちの思い出話に花が咲いた。

こうしたレセプションは東京だけではない。今回のベイツのレセプションは、東京の後に、上海、香港でも開催された。一昔前は、アメリカの大学は、日本だけでこうした活動を行った。しかし、今やアジアの各都市を巡るツアーが常態化してしまった。

現在、アメリカのどの大学でも、日本からの留学生は、以前に比べると圧倒的に減っている。最近、ハーバードなどのアイビーでは回復ぎみだというが、リベラルアーツカレッジは日本では知名度が低いこともあり、減る一方のようだ。

この状況を考えると、日本の大学は一刻も早くグローバル化してほしいと私は思う。若者たちが内向きになり、世界に出て行かないのなら、せめて国内をグローバル化するしかない。そうしないと、日本は限りなく国力を落としていくだけになる。

山田 順 ジャーナリスト

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やまだ じゅん / Jun Yamada

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年『光文社ペーパーブックス』を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースも手掛ける。著書に『出版大崩壊』『資産フライト』『出版・新聞 絶望未来』『2015年 磯野家の崩壊』などがある。

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