「働き方改革」を潰す社内幹部のアレルギー うまくいくかは経営トップ層の「腹オチ」次第

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結局、筆者が業界問わず、数多くの企業の働き方変革を支援している中で、共通するのは、トップ層の腹オチと発信の強さが重要だということだ。女性活躍推進も同様だが、担当者や現場がどれだけ推進しようとしても、「まだまだ本音では腹オチしていない」幹部が多い。だから、現場/本人任せや、小手先の対策に終始してしまっている。

残業時間が一定を超えると評価が下がるようにしたものの、「(上司の)評価が下がるので、退社して持ち帰ってやれ!」という解決策がまかり通るのは序の口だ。そもそもの業務設計やマネジメントそのものには何ら手がついてない。

現場目線に立てば、「早く帰ると残業代が減るので生活が苦しい」という状況で、「仕事を効率的に進めましょう」と言われても、本人にそのインセンティブは働きにくいのも当然だ。本気で取り組むのであれば、「長くやった者勝ち」ではなく、「効率的に進めた者勝ち」で、発揮した価値に応じた評価・給与体系まで、トップ主導で踏み込んで考える必要が出てくる。

推進する理由、目指す姿を整理しよう

もちろん量を経験する中で、成長するのではという意見もあるだろう。それはある意味で真実だと思う。仕事の土台も基礎もないまま、「働き方改革」や「ワークライフバランス」という「印籠」だけを振りかざすことに、違和感のある方が多いのはよくわかる。やみくもな根性論ではなく、基本が身につくまで/ここぞというタイミングでは、適切なやり方で必要な量を確保することが大切だ。「休む自由」だけでなく、「働く自由」のバランスだ。

以上を踏まえて、そもそも働き方改革をなぜ推進するのか、組織や個人としてどこまでを目指すのかを整理してほしい。人員確保、競争力確保など、十把一絡げでないその理由をしっかり認識することからスタートだ。

筆者が支援したある大手企業でも、ヒザをつき合わせ、働き方改革を通して組織が目指す姿と、それが個人の目指す姿とどうつながるのかを徹底的に話し合った。制度や仕組み改善だけでなく、納得したうえで上司側、メンバー側がどう変わっていく必要があるのかを決め、初めて取り組みが前向きに進み出した。

まず、上位者側が自ら、今まで働いてきた環境を良い意味で自己否定し、さらなる進化を遂げようとしているだろうか。表面上だけ「右にならえ」では結局、過去と同じスタイルを押し通すことになる。その結果、現場は混乱しせっかくの挑戦が骨折り損になるだけ。

皆様の職場はどうだろうか。

徳谷 智史 エッグフォワード 代表取締役

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とくや さとし / Satoshi Tokuya

京都大学経済学部卒業。企業変革請負人。組織・人財開発のプロフェッショナル。大手戦略系コンサル入社後、アジアオフィス代表を経て、「世界唯一の人財開発企業」を目指し、エッグフォワードを設立。総合商社、メガバンク、戦略コンサル、リクルートグループなど、業界トップ企業数百社に人財・組織開発やマネジメント強化のコンサルティング・研修など幅広く手がける。近年は、先進各社の働き方改革、AI等を活用したHR-Tech分野の取り組みや、高校・大学などの教育機関支援にも携わる。趣味はハンドボール、世界放浪等。ご相談・取材・執筆・講演依頼はこちら

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