ただ、販売価格判断の「先行き」が伸びているところを見ますと、今後、消費者物価がじわりと上昇する可能性があります。輸入物価の上昇というアベノミクスと関係のないところで、物価は上昇しやすくなっているということです。
しかし、輸入物価が上昇することで仕入れ価格も上がり、その結果、消費者物価も上がるということは、単に消費者のおカネが海外に出ていくということです。これでインフレ目標が達成されても、日本経済にとっては何のメリットもありません。
アベノミクスの成果を見極めるためにも、販売価格と仕入れ価格の動向には注意が必要です。
経営者は「期待バブル」を見抜いている
次は、4の設備投資計画等を見て下さい。「設備投資額」の動きからは、経営者が今の景気をどう見ているかがわかります。2013年度の設備投資の計画は、すべての規模と業種において前年度比マイナスとなっていますね。業況はまずまずなのに、設備投資をしようと考えていないのです。
もう少し詳しく見てみましょう。上期下期に分けますと、上期はおおむね前年同期比プラスになっていますが、下期は大幅なマイナスとなっています。景気が上昇する見通しの上期に、ある程度設備投資を行って、下期は大幅に減少させるという意図がうかがえます。経営者の本音としては、下期の設備投資までは考えていないということではないでしょうか。
つまり、経営者たちは「アベノミクスは期待だけで終わるのではないか」と考えているということです。今後、この期待が本物になるのか、期待倒れになるのか。それを見極めようとしているのでしょう。2014年4月には消費税増税も控えていることも影響しているかもしれません。
景気に明るさが見えてきたと報道されていますが、安倍政権は、金融政策や公共事業を中心とした短期的な景気対策以外には、中長期的に日本経済を底上げする「経済政策」については、具体的にはほとんどのことに着手していません。日銀の黒田新総裁が新たな金融緩和策を発表したことを受け、日経平均株価、円相場ともに大きく動いていますが、経営者の多くは、まだ様子を見ている段階だと思われます。
このように、日銀短観のような生のデータを詳しく見ていきますと、正確な景気の状況を把握することができます。冒頭でも触れましたように、一部の報道では、日銀短観について「大企業の景況感がよくなった」ことが強調されて、あたかも日本全体の景気がよくなった印象を与えがちですが、実は中堅企業や中小企業の業況は悪化しているのです。私たちは、こういった点を見落としてはいけません。
次回は、引き続き日銀短観のデータを分析しながら、日銀が行おうとしている「大胆な金融緩和」の先に何が起こるかを考察します。(次回につづく)
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