ブリヂストンが東洋ゴムと資本提携 荒川流「首位堅持宣言」

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ブリヂストンが東洋ゴムと資本提携 荒川流「首位堅持宣言」

「タイヤ・ゴム会社として、名実共に世界一を目指す。考えられる戦略、施策すべてを使う。企業との提携もその一つだ」

2006年の社長就任以来、大型施策を矢継ぎ早に打ち出してきたブリヂストンの荒川詔四社長。米国オクラホマシティの工場閉鎖、北九州市で30年ぶりの国内新工場建設、再生タイヤ大手バンダグ社の買収に続き、新たに繰り出した次の一手。それは、タイヤ国内4位、東洋ゴム工業との資本提携だった。

東洋ゴムはトラック・バス用タイヤや大口径の高性能タイヤを得意とする。しかし、米国進出に遅れるなど、世界での存在感は薄い。荒川社長は「東洋ゴムの独自技術には優位性がある」と1月に提携を申し入れた。両社が頭を悩ませる原材料調達に加え、技術開発、物流で協力。さらに防震ゴムなどの非タイヤ事業でも、幅広くタッグを組む。

ただし、マーケティングや製品開発には踏み込まない。出資比率も8.72%。第3位株主に躍り出たとはいえ、何とも中途半端だ。「自主経営を尊重する。提携分野が多岐にわたるため(2~3%ではなく)この比率にした」と荒川社長。現段階では株を買い増す計画もなく、役員派遣もしないと明言した。

背景には、独占禁止法の抵触(2社計の国内シェアは6割弱程度)をにらんだともみられる。「話を詰める中で(抵触の)懸念が出てくれば(当局と)相談なり承認をとるなり、慎重に検討していく」と荒川社長は含みを残す。

外国企業の買収は回避

世界に目を向けると、タイヤ市場は混戦状態だ。ブリヂストンと仏ミシュランがシェア17.2%で肩を並べ、米グッドイヤーが16%で真後ろに控える。東洋ゴムへの出資は、ライバル2社への首位堅持宣言とも受け取れる。

一方で昨年、耐熱材の耐火性能偽装事件で痛手を被り、収益改善策も後手に回っていた東洋ゴム。筆頭株主が投資ファンドのスパークス・グループであることから「外国企業が興味を示しているとうわさされていた」(関係筋)。原油高騰で世界的な業界再編機運が高まる中、「世界に誇れるすばらしい会社」(中倉健二社長)から資本注入を受けた。望まぬ形での再編に巻き込まれることは、当面避けられた格好だ。

(撮影:今井康一)

高橋 由里 東洋経済 記者

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たかはし ゆり / Yuri Takahashi

早稲田大学政治経済学部卒業後、東洋経済新報社に入社。自動車、航空、医薬品業界などを担当しながら、主に『週刊東洋経済』編集部でさまざまなテーマの特集を作ってきた。2014年~2016年まで『週刊東洋経済』編集長。現在は出版局で書籍の編集を行っている。

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