選挙制度改革"0増5減"より大きな対立 混合制度の意図せぬ効果、いいとこ取りの難しさ

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重複立候補がもたらす、復活のチャンス、政党の存在感

日本ではドイツと異なり、比例代表部分よりも小選挙区部分が強調されやすい。政党が提出した名簿で上位に登載され、比例のみで擁立される候補者も一部いるが、大部分は小選挙区との重複立候補である。

比例代表部分で配分された議席は、各政党の名簿で上位の候補者から順番に埋められていく。重複立候補で名簿順位が同一の場合は、小選挙区で健闘した候補から順番に当選する。各候補は、小選挙区当選者に対する自身の得票の比率、「惜敗率」に基づいてランクづけされるのだ。

幹部クラスが小選挙区落選、比例での復活もできなかった、2012年衆院選。民主党の開票センターの様子

2012年末の総選挙では、官房長官をはじめ、民主党閣僚の多くが小選挙区で落選、比例復活できなかった。代わりに復活した議員には、自分の選挙区に力を集中できた、必ずしも幹部と呼べない者も多かった。

日本でも、幹部を比例名簿の上位に載せて当選を保障することは可能だが、それは、一般候補者の努力を阻害するおそれがある。はじめから比例復活を望めないとわかっていれば、当選が難しい候補者は、集票のための努力をしなくなるのだ。

惜敗率で復活当選が決まる制度は、小選挙区で落選しそうな候補者にも、最大限の努力を促すことになりやすい。落選しそうでも、自分の政党の他の候補者より惜敗率が高ければ、復活のチャンスがあるからだ。

また、重複立候補は政党にとってもメリットがある。小選挙区で候補者を擁立することで、比例での政党の得票に繋がる傾向があるからだ。

そのため、各政党は重複立候補を活用して積極的に候補者を擁立し、支持の拡大を狙う。ただし、このような戦略は、政党というまとまりに対して有権者の投票を促すことは難しくなるという可能性もはらむ。

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