「GitHub」の働き方革命は何がスゴいのか? アップル、LINEが採用した「未来の働き方」

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また、オバマ政権では、GitHubに2016年予算を掲載したり、検討中の政策を掲載してGitHubを通じたレビューを行うなど、プログラミングに限らず、政府や政策のオープン化の手段として、GitHubを利用している。

これまでも、政府や政策に対して、パブリックコメントや投票といった手段での関与が可能だった。しかしGitHubの活用は、オープン化、スピード、そして議論の促進という点で、これまでの民主主義の仕組みとは一線を画す。

「未来の働き方」を社内に導入

ホワイトハウスでテクノロジー補佐官を務めるアルヴァンド・サーレヒー氏

ブルームバーグの事例からは、「オープンソースの文化を企業内に取り入れること」によるメリットを存分に感じ取ることができる。またホワイトハウスは、重複する開発を避けることで貴重な税金を節約することにつなげた。

GitHubを企業内に取り入れることは、冒頭で触れた「未来の働き方」を社内に導入することだ。そうした先進的な環境を整備することは、米国に限らず世界中で企業が課題として抱えている、「優秀な開発者を雇い、長く勤めてもらう」ための手段になってく。

同時に、GitHubカンファレンスの基調講演では、教育に対する取り組みも取り上げられた。学校向けには割引を行っており、授業での活用のノウハウも共有されている。また学生の開発者に対しては、クラウドやソフトウエア利用の特典を与えるなどのサポートも手厚い。

教育にGitHubの環境が広がることは、学生が若くして企業とのコラボレーションに触れることにつながり、また企業にとっても、GitHubを導入していることが、新人として入ってくる開発者への安心材料を与えることになる。

実はGitHubは、コード以外にも、その仕組みを利用することができる。たとえば文章であれば、コードと同じように、変更箇所をチームで議論することもできる。

GitHub Universe 2016では、新たな機能として、ワークフロー管理の仕組みが紹介され、業務管理システムとしての側面を見せた。このことは、GitHubが、開発者のためだけではなく、社内のより多くの人々にとって使うべき環境へと成長したことの表れだ。

もし社内に開発者がいたら、GitHubのことについて聞いてみるといいだろう。仕事の仕方やコラボレーションを促進するヒントが得られ、同時に、その人の知らなかった一面も、目にするかもしれない。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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