新幹線沿い「巨大ビール」が映す美味い仕掛け タンクに描かれた「泡」の量には秘密があった

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新幹線からよく見えるスポットは、新幹線がよく見えるはずだが、キリンビール名古屋工場の見学コースには、残念ながら新幹線がよく見えるスポットはない。ただ、工場から一歩出ると、防音壁のない高架線を走り抜ける新幹線を間近に見ることができる。

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キリンビール工場から歩いて行ける清洲城。門をくぐったところが天守の玄関という、訪問者に優しい城。ただし館内にエレベーターはない

工場見学が終わったら、シャトルバスには乗らず、北西方向へ歩いてみよう。工場前から県道67号線を一宮方面へ10分ほど歩くと、清洲城の入口に着く。5月6日公開の「新幹線から眺める数分間の『天下統一の歴史』」で紹介した、織田信長の居城だ。現在の清洲城天守は1989(平成元)年に観光施設として再建された模擬天守で、本来の清洲城とは五条川を隔てた対岸にある。

だが、天守からの見晴らしは抜群だ。先ほど見学してきたキリンビール名古屋工場はもちろん、東海道新幹線やJR東海道本線、遠くは名古屋城なども一望できる。天守内には信長と戦国時代についての展示が充実しており、NHKの番組かと見紛うような質の高い映像展示も楽しめる。

かつてビールを運んだ鉄橋が・・・

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国鉄末期に廃止された麒麟麦酒専用線。今は橋桁に清洲公園の案内などが掲示されている。すぐ隣は東海道貨物線だ
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「麒麟麦酒株式会社1963」の刻印が見える橋桁。名古屋工場の開設が1962年だから、操業開始から間もない時期に建設されたことがわかる

天守から降りて、五条川のほうへ歩いてみよう。新幹線や在来線の橋梁と並んで、今は使われていない鉄道橋がある。

よく見ると、橋桁には「麒麟麦酒株式会社」の刻印が。これは、1985(昭和60)年頃まで使われていた、キリンビール専用線の跡。かつて、キリンビールは国鉄にとって最大の荷主のひとつで、名古屋工場からもビール専用輸送列車が多数発着していた。

だが、国鉄末期の貨物輸送縮小・合理化によって廃止され、現在ではトラック輸送に切り替わっている。新幹線の高架の脇には、新幹線開業以前に東海道本線が使っていた橋脚も残っており、鉄道の歴史を物語っている。

本来の清洲城址である清洲公園で織田信長像などを眺め、五条川沿いに10分ほど歩けば、名鉄名古屋本線の新清洲駅に着く。枇杷島駅からの所要時間は、工場見学を含めて3時間ほど。「新幹線の車窓を訪ねる旅」としてオススメだ。

(写真はすべて筆者撮影)

栗原 景 ジャーナリスト

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くりはら・かげり / Kageri Kurihara

1971年東京生まれ。出版社勤務を経て2001年独立。旅と鉄道、韓国をテーマに取材・執筆。著書に『新幹線の車窓から~東海道新幹線編』(メディアファクトリー)、『国鉄時代の貨物列車を知ろう』(実業之日本社)等。

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