高級コンデジ、ペンタックスリコーの秘策 スマホに食われ縮小する市場に、“集大成”で臨む

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ペンタックスリコーが5月下旬に発売する高級コンパクトデジカメ「GR」

会見に登壇したプロカメラマンの森山大道氏は、「フィルム時代からGRシリーズを使用している。ストリートスナップに最適」とその魅力を語った。

カメラ映像機器工業界の統計によると、カメラ機能の進化したスマホ普及の影響が直撃しているコンデジ市場の2012年度出荷金額は、前年度比22%減。直近の13年2月も前年同月比49%減と底が見えない状況だ。

スマホ対抗には差別化が必要

一昔前なら写真は現像して個人で楽しむぐらいしかなかった。しかし、今は写真を現像せずにアルバムのようにデータ保存したり、メールでやり取りしたり、はたまたフェイスブック(facebook)など、SNS上にアップロードするといった新しい楽しみ方も広がっている。

画質を追求しないのであれば、一定程度のカメラ機能を持ち、メールやネット接続が手軽にできるスマートフォンが1台あれば十分。販売店からは、「高倍率ズーム・手ぶれ補正・高画質といった機能でスマホと差別化しないコンデジは売り場で淘汰されつつある」と指摘する声もあがる。

まさにコンデジ苦難の時代にあって、高画質を誇る高級コンパクトは、スマホとの差別化を狙うカメラメーカーの生命線でもある。

富士フイルムは11年3月に発売した13万円の「FinePix X-100」以降、高価格帯コンデジのXシリーズに力を入れ、ソニーも12年11月にフルサイズセンサーを搭載した25万円のコンデジ「RX-100」を発売し、話題を呼んだ。このように、各社高級コンデジのラインナップを拡充させている。

調査会社BCNの調べによると、国内では3月の高級コンデジの販売金額が前年同月比52%増。(BCNはセンサーサイズ1/1.7以上を高級コンデジと定義)。コンデジ市場での高級コンデジの販売金額の構成比も、約13%まで上がってきている。ペンタックスリコーが新しい「GR」で狙うのは、まさにこの需要。上昇気流に乗ることができるか。火付け役が“集大成”と呼ぶモデルの登場で、デジカメ販売の最前線も盛り上がりそうだ。

島 大輔 『会社四季報プロ500』編集長

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しま だいすけ / Daisuke Shima

慶応義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程修了。総合電機メーカー、生活実用系出版社に勤務後、2006年に東洋経済新報社に入社。書籍編集部、『週刊東洋経済』編集部、会社四季報オンライン編集部を経て2017年10月から『会社四季報』編集部に所属。2021年4月より『会社四季報プロ500』編集長。

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