東電「使用量通知遅れ」は自由化の阻害要因だ 口座引き落としできず、料金の過大請求も発生

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「電力広域的運営推進機関」(以下、広域機関)が定めたルールでは、送配電会社は検針から原則4営業日までに電気の使用量を小売販売会社に通知しなければならない。東電PGが8月下旬に実施した検針分については、同社が独自に目標として定めた「7営業日」時点での未通知件数は139件(全体の0.2%)に急減したが、本来の「4営業日」時点での未通知は1517件と、それまでとさほど変わっていない。

4月に電気の家庭向け小売販売に参入した新電力大手のJXエネルギーによれば、「東電PGからの通知については常時2000~3000件が4営業日よりも遅れている」(田中信昭・電気事業部部長)という。「その結果として、当社からお客様への電気料金の請求の遅延につながるリスクがある。本来のタイミングで銀行引き起こしができなかったり、2~3カ月分まとめて請求することになりかねない」(田中部長)。

しかも、「どのお客様で遅れが発生するのかも把握できない。検針日から10日くらい後に東電PGからデータが来ることもあれば、数カ月たってから届くものもある」(田中部長)。

誤った使用量の通知も多発している

こうした通知遅延は、JXエネルギーに限らず、東電管内で家庭向け電力販売に参入したほぼすべての企業に影響を及ぼしている。

さらに深刻なのが、東電PGから間違った使用量が通知される事態が多発していることだ。東電PGの発表によれば、誤通知が判明したのは9月5日時点で1351件。8月22日時点と比べて409件増加している。

同じく4月に家庭向け販売に参入した東急パワーサプライによれば、「東電PGによる使用量通知の遅れは確かに減少傾向にある。その一方で誤通知はむしろ増えている印象がある」(佐藤美紀・同社政策・広報担当グループ長)。誤通知については、東急パワーサプライ社内での目視によるチェックで見つかり、東電PGに問い合わせてその事実が判明するパターンが多いという。

「今のところ、お客様への誤った請求は水際で防いでいるが、東電PGからの誤通知はそれなりの数があるため、現場では気を抜けない対応が続いている」(同氏)。

一方、ある新電力大手では、「東電PGから誤って通知された値を用いてお客様に電気料金を請求した事例がある」という。

こうした通知遅延や誤通知による悪影響は、新電力だけが被っているわけではない。東電グループで小売販売を担当する東電EPでも大きな問題になっている。しかも同社特有の事情もある。

同社に対しては、月間のピーク電力確定に必要な「契約電力算定結果内訳帳票」の未発行が約2万2000件にのぼっている(9月9日時点)。

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