過度な「自己分析」は就活の妨げでしかない 先輩たちは早めに活動すべきと勧めるが…

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今の学生には信じられないだろうが、かつての就職活動では自己分析を準備しておく必要はなかった。私は1986年に就職したが、その時点でそうした言葉はなかったし、それに類する行動もしなかった。自己分析という言葉が出てくるようになったのは、1990年代半ばごろで、エントリーシートの活用が大手企業の間で広がるようになってからだ。エントリーシートは、インターネット就職サイト利用の広がりにつれて大手企業への学生の応募が数十倍へと膨らんだため、落とすために必要不可欠なツールとなっていった。

一方、多くのエントリーシートでは、自己PR、学生時代に力を入れたこと、志望動機などを書くのだが、これが最初はなかなか大変な作業である。自分のことを他人に理解してもらうように書くことは意外に難しいからだ。だから自己分析が必要だと、多くの就活本があおるし、大学のキャリアセンターでも対策を教えている。

しかし自己分析をして一生懸命エントリーシートを書いても、大手企業の多くが「採用ターゲット大学」を設定しているため、対象大学以外の学生の多くが、半ば自動的に落とされてしまっている。自己分析対策をまじめにしっかりやればやるほど、心が折れて傷ついてしまうという悪循環が現状では起きている。

自己分析だけで適職は見つからない

2.行きたい業種、企業を絞るための「自己分析」
・とにかく自己分析。自分はどんな職種に就きたいのか、どうしてなのかがわかっていれば少し楽になると思う
・自己分析を行い、志望職種や業界を考えておく
・自己分析、自分が本当に働きたい業種はある程度絞った方が本気になれる
・自己分析をしっかりして、自分は何がしたくて何が合うのかを理解しておくと企業選びの際に失敗が少ないと思う
・自己分析。自分がどんな人間で何をしたいのか、しっかり考え、企業を選ぶべき
・自己分析。何がしたいかを明確に自覚しないとスタートに立てない

 

企業で働いた経験がない学生にとって、多様な業界、さまざまな職種、膨大な企業数を前にして、どう絞り込めばよいか迷うのは当然だろう。そうした時、自己分析によって、自分に向く業種、職種、会社が分かってくるのではないかと考える学生は多い。

しかし、それは実際に働いている人と話をし、生の情報を得ることによって理解すべきことである。就職活動の前半戦で、OB・OG訪問や社会人と話すことをまったくしない学生が非常に多いが、あるセミナーで就活中の数百人の学生になぜ社会人と話さないのかと聞いたところ、「自己分析が終わっていないから」という答えが大半だったことに驚いた。

私は、「企業で働いたことがないあなたたちが、自身の中をいくら探しても答えは見つけられない。できるだけ多くの働いている人と話してから、どのような働き方をしたいのかを自問自答してみればよい」とアドバイスした。するとセミナー後、ある学生が来て、「自己分析がいまだ中学までしかできておらず焦っていた。自己分析を終えなくても就活を進めていいとわかってホッとした」と話してきた。どうやら分厚い自己分析本と格闘していたらしい。

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