自動車も円安継続で輸出増とは限らない トヨタ、日産、ホンダの円安の影響はどの程度か

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経済危機前の利益増は輸出増による

以下では、自動車産業について、経済危機前の円安が営業利益に与えた影響を、前述のモデルで説明できるかどうかを検討しよう。

2003年に大規模為替介入が行われたこともあり、04年~07年にかけて円安が急激に進んだ。ドル/円レートは、04年6月の1ドル=109.45円から、07年6月の122.64円へと、12%ほど円安になった。

他方、法人企業統計における「自動車・同附属品製造業」の営業利益は、04年の2兆3369億円から07年の3兆0241億円へと、約3割増加した。つまり、為替レート減価率をかなり上回る営業利益の増加率が実現したわけだ。

こうなったのは、輸出が増加したからだ。すなわち、自動車の輸出額は、04年の9兆2875億円から、07年の14兆3169億円へと55%増加した。台数では33%の増加であった。為替レート減価率を参照すれば、この間に現地通貨建て価格が10%ほど上がったことになる(ドル建て価格が上昇したのだから、数量増は円安の結果でないことが分かる。これは、アメリカの住宅ブームなどによって消費ブームが起こり、自動車購入が増加した結果だ)。

ところで、上のモデルを用いるには、セグメント別の営業利益のウエイトのデータが必要だ。まず、05年においては、台数の比率は、国内生産1080万台、国内販売585万台、輸出505万台、海外生産1061万台であった。営業利益率は、セグメントによって異なる可能性もある。しかし、トヨタ自動車の06年3月期決算要旨にある数字から売上高営業利益率を計算すると、連結ベースで8.9%、日本国内8.2%と、大きな違いはない。そこで、営業利益は、販売台数の比率と同じウエイトで生じるものとしよう。

そして、e(為替減価率)=0.12、輸出はg(数量増加率)=0.33、h(価格上昇率)=0.1とし、国内については、数量も価格も一定、海外生産分はg'=0.33とする。売上高営業利益率は、トヨタの連結ベースの値を用いる。

以上の数字を用いて上のモデルで計算すると、営業利益の増加率は、40%となる。これは、03~07年までの実際の値30%よりは高いが、あまり大きな違いではない。したがって、上のモデルは、円安によって営業利益がどの程度増えるかを近似的に評価するモデルとして使えるだろう。

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