「日本人の円売り」が出れば、一段の円安に みずほコーポレート銀行マーケット・エコノミスト唐鎌大輔氏に聞く

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円安・株高・超低金利のすべてそろっていながら、企業の業況判断や実際の業績が良くならなかったら、問題は企業の競争力だということになる。その後は企業の第1四半期決算や9月や12月の日銀短観、そして秋の「展望レポート」が注目される。

――今後の為替見通しは。

これまでは株価も為替も外国人の期待先行による動き。日本人による円売りの動きは出ていなかった。しかし、今回の日銀の大量の国債買い入れで超長期の金利まで低下し、長期的な運用を行う日本の機関投資家が国債市場からあぶり出され、外貨建て資産に運用先を向けるのだとすれば円安は加速する。

主に向かう先は、米国債だろう。日本は2015年まで金融緩和を進めるのに対して、FRB(米国連邦準備制度理事会)は15年に向けて、金融緩和政策が出口に向かう。これまでは日米金利差がついていないので、「金利差なき円売りは続かない」というロジックだったが、足元で10年物の金利差は拡大基調にあって、必ずしも「金利差なき円売り」ではなくなっている。

「日本人の円売り」が出れば1ドル=100円超の円安に

こうなると円売りは持続性が期待できる。4~6月で1ドル=100円、1ユーロ=130円を目途と見ていたが、それ以上に円安が進む可能性が高い。機関投資家に代表される「日本人の円売り」が出れば円高局面終了であり、それが円売り基調継続のためのラストワンピースである。

欧州の政治リスクなど、リスクはきちんと見ていかなければならないが、米国の3月の非常に悪い雇用統計に反応しなかったことを見ると、円という通貨がリスク回避先ではなくなっているのかもしれない。貿易赤字が続いて、経常収益がどんどん落ちていくなかで、いよいよ位置づけが変わってきたとすれば、株が下げるような局面になっても円安が続くということも考えられる。

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