原発再稼働でも、関連メーカーへの恩恵は先 稼働早い加圧水型向けシフトの動きも

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岡野バルブ製造は、事故を起こした福島第一原発も含まれるBWRに強く、これまでバルブ、メンテともBWR向けの実績が多かった。ただ、新安全基準によれば、BWRの再稼働は当面、困難だ。早期再稼働の候補とされているのは、PWRの九州電力・川内、同・玄海、四国電力・伊方、北海道電力・泊などの原発である。

川内、伊方、泊の再稼働にらみ、加圧水型にシフト

そこで、岡野バルブ製造では、従来にも増してPWR向けの受注に力を入れている。今期は九電の川内や玄海、四国電の伊方、北電の泊向け製品の納入が見込めるという。これらは、震災対策弁などの非常用設備装置で、いずれも再稼働を目指して安全性を高めるための製品だ。

ただ、それらはいずれもスポット的な納入にとどまり、業績への寄与度もそれほど大きくはない。やはり、原発メンテこそが収益源であり、それを受注するには、原発が再稼働して一定期間後に定期検査を迎えることが必要になる。

そこまでの道のりは、きわめて遠いといわざるをえない。再稼働を目指す原発が新基準での審査に適合したとしても、実際に再稼働させるには、地元などとの調整が避けられないからだ。

現在の国民感情からすれば、再稼働実現へのハードルは高い。岡野バルブでは、あくまで原発再稼働を見据え、連結ベースで約450人いる従業員の雇用を守り続ける方針を崩さない。ようやく“曙光”が差し始めたとはいえ、しばらくは厳しい状況が続きそうだ。

柿沼 茂喜 東洋経済 記者

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かきぬま しげき / Shigeki Kakinuma

入社以来、一貫して記者として食品・外食、金融・証券、電力・ガス・石油、流通、精密機器、総合電機、造船・重機などの業界を担当。この間、『週刊東洋経済』『会社四季報』『金融ビジネス』の各副編集長、『株式ウイークリー』編集長、編集局次長などを経て現職。

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