(第2回)コンバージェンスの構造

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TMT業界の傾向

 コンバージェンスの周辺情報を会社四季報2006年2集(春号)のCD−ROMで拾い、そのイメージを広げてみましょう。まず、上場企業の文字情報にコンバージェンスに関するキーワードで検索をかけてみました(表1)。

表1:検索キーワード一覧

製品とサービスの
コンバージェンス
ADSL、CATV、FTTH、VoIP、インターネット、コンテンツ、ブロードバンド、携帯電話、光通信など
組織のコンバージェンス M&A、合併、資本提携、買収、アライアンス、提携

・セクター別の傾向
 まず、キーワードのヒット数ごとに企業数をセクター別に集計しました。
 製品とサービスのコンバージェンスは、情報通信業でヒット数、ヒット率(ヒットする企業数/セクターごとの企業数)共に最も大きく、次に電気機器と続きます(表2)。組織のコンバージェンスでも、情報・通信業でのヒット数が多いことがわかります(表3)。このことから、情報・通信業がコンバージェンスの中心にあると言えると思います。なお、卸売業は、TMT関係に関与している総合商社や専門商社などが、小売業は主にTMT関係の製品やメディアを販売してる企業が、建設業は主に電設工事業者で光ファイバーの敷設や携帯基地の工事を行っている関係で、製品とサービスのコンバージェンスに登場しました。
 製品とサービスのコンバージェンスでヒットした企業を売上の降順でリストにすると、NTTに続き住友商事がランクインします(表4)。その【特色】を読むと、「CATV事業や都市再開発で独自展開」とあります。住友商事は、CATVのジュピターテレコムと提携しており、総合商社や専門商社を中心に、卸売業もコンバージェンスの中核を担っています。また、電気機器の企業が上位にランキングしており、当然の結果ではありますが、TMT業界にとって電気機器業界の存在は大きいといえます。
 また、ヒットした企業を時価総額の降順でリストにすると、NTTとドコモに続いて、ヤフー、KDDI、ソフトバンクが上位に並びます(表5)。いずれもコンバージェンスの中心となる企業です。ソフトバンクの特色などを見てみると、典型的なコンバージェンス型の製品やサービス戦略を進めている企業であることがわかります。ソフトバンクは、1980年代に通信の自由化が始まったときからテレコム業界に関わっており、LCR(※)のアイデアもソフトバンクによるものといわれています。なお、ソフトバンクは卸売業ですが、傘下に日本テレコムやYAHOOがあり、ボーダフォンも買収しています。すでに卸売業というよりは情報・通信業に属する企業かもしれません。

表2:製品とサービスのコンバージェンスとキーワード(セクター別)
  キーワード数 企業数 比率
セクター 1 2 3 4 5 6 7
情報・通信業 76 42 22 14 2 1 1 158 330 47.9%
電気機器 57 7 4 1       69 310 22.3%
サービス業 34 13 2 1       50 333 15.0%
卸売業 24 8 2 2 1     37 388 9.5%
小売業 14 3           17 374 4.5%
建設業 14 1           15 221 6.8%
その他製品 12 1 1         14 116 12.1%
その他 43 5 1         49    
274 80 32 18 3 1 1 409    

表3:組織のコンバージェンスとキーワード(セクター別)
  キーワード数 企業数 比率
セクター 1 2 3 4 5
情報・通信業 111 26 2     139 330 42.1%
卸売業 92 18 2     112 388 28.8%
サービス業 85 13 4 2   104 333 31.2%
小売業 73 17 2   1 93 374 24.8%
電気機器 44 9       53 310 17.1%
建設業 37 11 1     49 221 22.1%
その他 297 46 6 2 0 351    
739 140 17 4 1 901    

表4:製品とサービスのコンバージェンスのキーワードでヒットした企業
(連結売上ランキング)
証券コード 企業 売上(百万円)
9432 NTT(情報・通信) 21,611,736
8053 住友商事(卸売業) 9,898,598
9437 NTTドコモ(情報・通信) 9,689,220
9433 KDDI(情報・通信) 8,760,117
6758 ソニー(電気機器) 7,159,616
6701 NEC(電気機器) 4,855,132
6702 富士通(電気機器) 4,762,759
9984 ソフトバンク(卸売業) 3,348,072
6764 三洋電機(電気機器) 2,586,586
6753 シャープ(電気機器) 2,539,859
「会社四季報CD−ROM2006年2集(春号)」による直近期の連結売上

表5:製品とサービスのコンバージェンスのキーワードでヒットした企業
(時価総額ランキング)
証券コード 会社 時価総額(百万円)
9437 NTTドコモ(情報・通信) 16,657,994
9432 NTT(情報・通信) 14,013,492
4689 ヤフー(情報・通信) 7,580,082
9433 KDDI(情報・通信) 6,655,017
9984 ソフトバンク(卸売業) 6,213,760
6758 ソニー(電気機器) 4,255,238
6753 シャープ(電気機器) 1.769,724
6971 京セラ(電気機器) 1.434.230
6702 富士通(電気機器) 1.331.679
4676 フジテレビジョン(情報・通信) 1.295.680
「会社四季報CD−ROM2006年2集(春号)」による直近期の時価総額

※LCR かってNCCが加入者に貸し出していた電話番号の前に自動的に0088などの番号を付加する装置

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