北朝鮮をめぐる、中国の苦悩と日本の無策 緊迫・北朝鮮ミサイル発射前夜?

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変わりつつある中国内の世論

その答えのカギは中国が握っているのは誰でも知っていることである。韓国の中央日報の報道によれば、過去30年で中国は北朝鮮に1000億ドル相当の援助を提供したとされ、また、過去4回に及ぶ国際的な対北制裁決議があっても実質的効果が薄かったのは中国が消極的だったから、というのは皆様ご存じのとおりだ。

しかし、国境を接する中国の国益にとっては北朝鮮の安定が第一優先なので、ほかの周辺諸国とアジェンダが異なるのも当然といえば当然だ。また、冷戦時代のメンタリティが残る政治家の中では、北朝鮮、中国、ロシアは一心同体であり、北朝鮮への圧力は結果的に中国とロシアに向かうという感覚も根強い。しかしながら北朝鮮を擁護するのが国益にかなう、という伝統的な反応の反面、今や実質的に核保有国となった北朝鮮が将来さらに制御不能になる前に、米中が今動かなければならない、という世論も強くなってきている。

そこで私のお気に入りである中国の討論番組“一虎一席談”(最近、北朝鮮関連の話題が急増している)や中国人の友人の話を聞いて中国の世論を調べてみたので、以下をご参考いただきたい。

万が一の事態でも、中国軍は参戦しない

まず、北朝鮮は主体思想を実践しており、中国の言うことも聞かず、国際社会が思っているほど影響力がない、という意見が多かった。北朝鮮はとにもかくにも、一筋縄ではいかない国なのだ。長年の友好関係に終止符を打つときが……という発言も一部にはあったが、やはり統一した大きな韓国が隣に来て米軍が駐留するより、現在の体制のほうが国益にかなうという意見が優勢だ。

また、北朝鮮の体制が崩壊して難民がいちばん押し寄せるのは中国であり、そのコストは払えないという点、そして、中国と米国がお互いに戦争することを決めないかぎり、深刻な戦争には発展しないという点が取りざたされていた。

なお、中国が中朝互助条約に基づき、北朝鮮が攻撃を受けたら自動的に中国が参戦するという約束事に関しては、中国にとっては北朝鮮を守るために米国と戦争するのは国益に合わないので履行されないだろう、と。

ちなみに朝鮮戦争のときに参戦したように、義勇軍が自動的に参戦するのでは、という外国人からの懸念に関しては、中国側の発言者からは“60年前と異なり、中国に義勇軍はおらず正式な軍隊があるだけなので、当時とは異なり自動参戦はない”という回答があった。有事の際に人民解放軍が参戦して大規模戦争に発展する、というのはどう考えてもなさそうだ。

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