円を売って、ユーロを買う選択肢は「あり」 キプロス問題をきっかけに、改めて欧州の将来を考える

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政治統合の可能性はあるのか

渋澤 それはそうなんだけど、本当に財政を統合しようとするならばだよ、それは政治的な統合をも、意味するわけじゃない。あれだけ経済格差がある国同士が、政治的に統合される可能性って、あるのかなあ。

中野 もちろん、すぐにそれが実現されることはないでしょう。時間はかかると思いますよ。今の世界経済のバランスを考えると、米国経済はすでにリーマンショックの痛手から立ち直って、景気は回復局面にありますが、一方で欧州諸国は、リーマンショックに端を発した欧州債務危機で、いまだに悩まされています。景気も最悪。だからこそ、米国経済に対抗できるだけの経済規模を確立するためにも、ユーロという統一通貨を軸にした経済統合が必要ですし、いずれ財政統合を軸にした政治統合という話も出てくると思います。

藤野 僕は中野さんの意見は正しいと思います。それはとても理想的だし、実現できればすばらしいことだと思うのですが、現実的には国々のエゴが残りますから、そのままで政治統合も含めた「ユーロ大共和国」を創るというのは、なかなかにハードルが高い。

渋澤 この間、ロンドンからベルリンに行ったとき、ドイツ首相のメルケルさんが、参加していた会議で話をしてくれたのね。彼女は「ひとつのヨーロッパ」というスタンスだったのだけれども、ドイツ国内では今も、南欧諸国に対する不平不満がくすぶっている。またイギリスでは、ある政治家がこう言っていました。「私の個人的な考え方を言うと、イギリスはEUにとどまるべきだが、今、国民投票を行ったら、どういう結果が出るかわからない」。

イギリスの場合、通貨はユーロではなくポンドという自国通貨を持っているけど、EUには属している。だとすると、たとえば再びユーロ加盟国のどこかで問題が起こったとき、EU全体の問題として、イギリスも何らかの負担を要請されるかもしれない。イギリス国民はそれをよしとしない、ということなんだな。

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