卵子凍結に助成を決めた浦安市長の「覚悟」 保険適用と同じ3割負担のラインを目指して

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そこで初めて、「2人目不妊・3人目不妊」という話を聞きました。基本的には子育ての話をしているのに「不妊」という言葉が出てくるんです。最初は意味が分かりませんでした。それまでの私は、1人も産めない人たちだけが不妊治療をしていると思っていたんです。最初から、産める人と産めない人のどちらかなのかと思っていました。

でも、話を聞いていくと、そうではないことが分かりました。第1子を普通に出産していても、年齢を重ねると卵子が老化していくために、第2子を望んでいても産めなくなる……これだけ多くなっているのに、2人目不妊の基本知識を私は知らなかったんですね。

34歳以下をボーダーとした理由

――浦安市では卵子凍結で助成する対象年齢を34歳までとしました。不妊治療のイメージで、38歳や39歳くらいがボーダーになるのかと思っていたので、34歳と聞いた時には、現実的だとは思いつつ、少し驚きました。

今、不妊治療クリニックなどで体外受精を実施している方の平均年齢は40歳を超え、成功率が1割だといいます。100万円ほどという大きな金額を支払っても、9割の人は結果が出ていないのです。

凍結卵子の生産率(出産率)を第一に考えた菊地医師からは「対象を29歳以下にしたい」という話もありました。でも、確かに統計的にはそのほうがよいだろうけれど、それはさすがに無理だろうと言ったんです。現実的に考えたら、29歳以下で実施しても来る人は少ないのではないか。現実を見ようと。

その話し合いを経て、「生産率(出産率)2割という数字をキープでき、高齢出産になる直前の34歳以下」という理由で、この年齢をボーダーラインに決めました。

35歳からは高齢出産になるので、その前の34歳を区切りしにすることで、妊娠に適齢期があると伝えるため……という考え方もありましたね。

――この政策について、浦安市民から声は届いていますか?

お礼は聞きますよね。まず一番よく聞いたのは、実際に不妊治療や卵子凍結保存をやっていた人たちからの声でした。

もうあきらめようと思っていたところで、市が助成することに決めた。それまでは公にできないことで、こっそりやるイメージだったのが、浦安市が助成すると言われたら、悪いことではないんだと、認められているという気持ちになれた、と。

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