ドーナツ屋が警官にコーヒーを配る深い理由 「つい、したくなる仕掛け」はこうつくる

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その結果どうなったかといいますと、野菜やフルーツの購入数が増えたことが報告されています。野菜やフルーツを買っていないことに意識が向くようになり、それが結果的に野菜やフルーツの購買行動につながったというわけです。

ダンキンドーナツが警官にコーヒーを配る理由

ご存じ、輸入食材を幅広く取り扱っているカルディでは、店頭でお客様に紙コップに入れたコーヒー(寒い時期はホット、暑い時期はアイス)を配ります。お客さんはコーヒー片手に落ち着いた気分で店内を見て回ります。

このお店で売っているコーヒーの味を知ってもらう機会になっているだけでなく、結果的に滞在時間を増やすことに成功している点が秀逸です。

滞在時間が増えれば消費金額も増える傾向があることは知られていますが、無理やり長引かせても意味がありません。快適な環境で心に余裕が生まれた状態でじっくり選んでもらってこそ、満足のいく経験が得られます。

さらに返報性の原理というのもあり、コーヒーをもらったから何か買ったほうがいいかなという気持ちも働きます。そういった経験が積み重なった結果、ちょっと疲れてコーヒーを飲みたくなったときにそのお店に足が向くようになれば、お客さんの誘引効果も抜群です。

コーヒーといえば、アメリカのダンキンドーナツでは、警察官にはコーヒーを無料、もしくは大幅に割引して提供した事例があります。これによって警察官がダンキンドーナツに立ち寄る回数が増えるので、治安の向上にも役立ちます。その結果、お客様にも安心して立ち寄ってもらえるようになります。

警備サービス会社とセキュリティ契約を結ぶことを考えれば、非常に安上がりで効果的なアプローチと言えるでしょう。

このように、無理やり買わせるわけでも、無理やり来てもらうわけでもなく、ちょっとした気づきや心地よい環境作りを通して自発的な購買行動をいざなう仕掛けは、お店側とお客様側の双方が満足できる、よい関係を築くことにつながります。

このような仕掛けによるアプローチは行動のデータを分析するだけでは見えてきません。

購買履歴データや閲覧履歴データといった人の行動の履歴を記録したデータを分析すれば、人の行動パターンが見えてきます。

購買履歴データを分析して、スーパーマーケットに来店するお客様の半分の人が牛乳を買っていることがわかったとすると、多くの人がスーパーマーケットの入口から牛乳の売り場まで移動しているという導線が見えてきます。

これはひとつの行動パターンです。

このような行動パターンをたくさん集めてもっと詳しい行動パターンがわかると、行動の意味が見えてきます。

たとえば、鶏肉、白菜、春菊、しいたけを買っている人がいれば、「水炊き」をするんだなということがわかります。

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