ハーバード大生が毎年「東北」で学習する理由 復興の地でしか得られない学びとは

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深い自省から行った大きな教育改革により、HBS二年時にフィールドで培う視点とは(撮影:岡田広行)
書店のビジネス書コーナーに居並ぶ「ハーバード」を冠した本は、とうに“賞味期限切れ”なのだという。2008年の金融危機を機に米ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)は深く自省し、大きな教育改革を断行した。その改革の申し子こそ、日本の東北を舞台にしたジャパンIXP(Immersion Experience Program)、直訳すれば(東北で)「どっぷり現場につかって経験して学ぶプログラム」だった。改革について『ハーバードはなぜ日本の東北で学ぶのか』を書いた元ハーバード・ビジネス・スクール日本リサーチセンター アシスタント・ディレクター の山崎繭加氏に聞いた。

頭と体と心のバランスを取る教育へ転換

──その改革、初めて知りました。

ビジネススクールは社会が求める人材を本当に育成できているのかという疑問が、実業界で高まっていました。2008年はHBS100周年の年でもあり、ここであらためてビジネススクールのあり方を考え直そうというプロジェクトが立ち上がりましたが、そこで世界金融危機が起こります。その張本人たちの多くがHBSの卒業生という、危惧していたことが現実になってしまいました。

──ケースメソッドが代名詞の、資本主義の総本山がHBSでした。

授業方法も劇場型の教室や設備もその効果が最大化するよう設計され、knowing(知識を増やす)に重点を置いていた。そこからdoing(実践して学ぶ)、being(自らを知る)を加えた、頭と体と心のバランスを取る教育へ転換したんです。1年生の必修科目にその「心技体」的な科目が加わり、2年生の選択科目にIXPを新設。初年度の2012年は日本を含む5地域でスタートしました。

HBSの学生数1850人に対し、この間、教授・学生を支えるスタッフが200人増えて1500人超になりましたが、そのほとんどがこの教育改革に伴う増強です。教室もインフラ体制も整え、HBSの「やると決めたら、おカネも人もつけて徹底的にやって結果を出す」文化が、まさに実践されました。

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