8年前のような「大暴落」を否定できない理由 緩和傾向だった金融政策の限界が見えてきた

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2008年10月27日の株価ボード。翌28日に、2008年安値の6994.9円をつけた(撮影:尾形文繁)

9月15日。8年前のこの日に米国の投資銀行のリーマン・ブラザーズが破綻した。いまや、誰もが耳にしたことがある「リーマンショック」が起きた日である。この破綻に端を発して、世界的金融危機が発生した事象をそう呼ぶようになった。あれからすでに8年が経とうとしていると考えると、あの日以来、金融市場はつねに不安を抱えた状態が続いていると感じる。

リーマンショックの発端は、2007年のサブプライム住宅ローン危機である。米国の金融機関による低所得者層への過剰融資に端を発した米国バブル崩壊がショックとなった。問題は、金融機関がこれらの債務を証券化し、世界中にばらまいたことにある。住宅市場の悪化や、それに端を発したファニー・メイやフレディ・マックなどの連邦住宅抵当公庫が危機的状況に陥った。政府支援機関における買取単価上限額の引き上げや投資上限額の撤廃など、さまざまな手を尽くしていたものの、サブプライム住宅ローンなどの延滞率は更に上昇。住宅差し押え件数も増加を続けた。

未曾有の世界連鎖的な金融危機だった

これを受けて、2008年9月8日には米国財務省が約3兆ドルの追加救済政策を決定した。これがまさに「Too Big to Fail(大きすぎて潰せない)」の走りとなったわけである。しかし、このような状況はリーマン・ブラザーズも例外ではなかった。ほかの金融機関とともに、多大な損失を抱える中、最終的には政府の支援を得られず、2008年9月15日に連邦倒産法第11章の適用を連邦裁判所に申請した。これにより、同社発行の社債や関連の金融商品を保有する企業への影響、さらに金融市場への悪影響が懸念され、これが世界的な金融危機に発展した。

2008年10月3日には当時のブッシュ大統領が、金融システムに7000億ドルの金銭支援をするための法案である「Troubled Asset Relief Program(TARP)」に署名したものの、株価の下落は止まらず、金融市場の混乱の沈静化にはそれから半年以上を要した。当時の負債総額は6000億ドルともいわれており、未曽有の世界連鎖的な金融危機だった。

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