撤退?継続?セブン傘下「バーニーズ」の前途 グループ改革案の発表を前に六本木で新店

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セブン&アイはバーニーズを取得した狙いについて、「バーニーズジャパンの持つ商品調達力や売り場編集力などのノウハウを活用し、商品開発力をさらに強化していきたい」「百貨店事業と早い段階でのシナジー効果が期待できる」と、2013年12月発表のリリースで記した。

2017年2月末に閉鎖される西武筑波店(撮影:今井康一)

だが、現時点でその効果が出ているとは言いがたい。そごう・西武の2016年2月期の営業利益は74.1億円と前期比27.5%のマイナスとなった。会社側は今2017年2月期の営業利益を100億円と見込むが、インバウンド需要の減退や婦人服の売り上げ低迷で、第1四半期(2016年3~5月期)の営業利益は1300万円(前年同期は5.3億円)にとどまった。現状の数字を見るかぎり、バーニーズがそごう・西武の業績に寄与しているとは言いがたい。

それどころか、2016年2月には西武春日部店を閉店。9月末にはそごう柏店と西武旭川店を、2017年2月末には西武筑波店と西武八尾店を閉める。いずれの店舗も業績不振が理由だ。

さらに「グループを挙げて推進するEC事業『オムニチャネル』分野との連携も視野に進めていきたい」と、バーニーズ取得時のリリースで記したが、こちらについても具体的な成果は乏しい。セブン&アイのインターネット通販で、バーニーズの商品は扱っていない。

ファンドはバーニーズ撤退を提言

2016年3月下旬、セブン&アイの株主である米ヘッジファンドのサード・ポイントは書簡を送った。送り先はセブン&アイの全取締役。その中ではイトーヨーカ堂の早急な縮小や再編、そごう・西武やニッセンホールディングスからの投資撤退が書かれているほか、バーニーズジャパンについても同じく撤退するように提言されている。

バーニーズジャパン自体は赤字に陥っているわけではない。が、当初想定したような百貨店とのシナジー効果が見込めない点や、収益柱であるコンビニ事業に経営資源を特化させるべきとの考えから、サード・ポイントはバーニーズジャパンの切り離しを求めたと考えられる。

セブン&アイは10月6日に予定している2017年2月期の上期決算発表において、総合スーパーを中心に業績が低迷する事業について、構造改革案の発表を計画している。当初の思惑どおりにシナジーが発揮されていないバーニーズジャパンについてはどのような判断を下すのか。セブン&アイ経営陣にとって決断の時が迫っている。

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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