ルネサスが3200億円の大勝負に賭けるワケ 米半導体インターシルを狙った背景は?

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だが、同じくパワー&アナログ半導体を手掛ける競合企業と比較すると、決して高い水準ではない。

直近の営業利益率は、最大手の米テキサスインスツルメンツは32.8%、それに次ぐ米リニアテクノロジーが46.2%。高度な技術力が求められる分野のため、製造業の中では総じて高い利益率が可能であり、インターシルが見劣りするのは否めない。

IHSグローバルの南川明主席アナリストは、「インターシルの製品は汎用のアナログ半導体が多く、競合が激しい分野のため、利益率が低くなる傾向にある」と分析する。

3200億円の「効果」は、まだ先に

それでもなお、ルネサスがインターシルを買収するのには理由がある。それは、アナログ&パワー半導体は、自社で育成するのにかなりの時間を要するということだ。

ほかの半導体と異なり、正しい性能を発揮するために他のパーツとのすり合わせなど微妙な調整作業が必要で、生産技術の大部分が技術者に依存しているといわれる。つまり、今回の買収には「時間と人を買う」という側面が多分に含まれているのだ。

市場の反応は良好とはいえない。買収に関する報道がなされた8月末以降、新聞紙面に踊った「3000億円程度」という金額について「割高だ」と指摘する声がアナリストたちの間で相次いだ。だが、外から見える数字だけで今回の買収の良否を判断するのは性急だろう。

ルネサスの柴田英利CFOは「3200億円の魅力はある。最後は結果で参った、と言わせるしかない」と覚悟を語った。外部からの批判をはね飛ばし、確固たる成長路線を歩むことができるのか。買収の真価が発揮されるには今少しの時間が必要だ。

東出 拓己 東洋経済 記者

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ひがしで たくみ / Takumi Higashide

半導体、電子部品業界を担当

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