福島第一原発で120トンの放射能汚染水が漏出 東電またも重大事故、設備の安普請が裏目に

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ネズミの感電による大規模停電事故や、誤った操作による多核種除去設備の停止など、福島第一原発ではここ最近、仮設設備の脆弱さを象徴する事故が立て続けに発生している。そして今回、環境中に汚染水が漏れ出すという深刻な事態が起きた。

漏出事故が発生した地下貯水槽は海抜35メートルの高台に設置されており、海側のタービン建屋に滞留していた汚染水をポンプで汲み上げ、セシウム吸着装置や淡水化装置を通過させた後の「濃縮塩水」を保管している。東電によれば、濃縮塩水の放射性物質濃度は「タービン建屋内の滞留水の半分程度」(尾野昌之原子力・立地本部長代理)というきわめて厳重な管理を要する汚染レベルだ。

産廃処分場レベルで汚染水を管理

ところが、福島第一原発では、1日に400トンもの汚染水が新たに発生。貯留タンクの急増設を強いられている東電は、管理型産業廃棄物処分場と同じ程度の遮水性能しかない施設に、放射性物質を大量に含む汚染水を保管するという急場しのぎの手法を用いた。今回、その施設の脆弱性が露呈した。

3月30日にはストロンチウムなど62種類の放射性物質を取り除くことができる設備の試験運転が始まったものの、4月4日には誤操作で稼働直後に運転が一時停止するトラブルが発生。そして今回、約1カ月分の貯水容量が新たに使えなくなった。東電は汚染水との戦いで一段と厳しい状況に直面している。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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