iPhone7、使ってみて分かった「真価」と「課題」 ヘッドフォン端子の廃止にどう対応すべきか

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ここまで述べてきたことはすべてiPhone 7とiPhone 7 Plus共通の機能だ。iPhone 7とiPhone 7 Plusの違いは、2倍の望遠レンズを装着した2つ目のカメラが備わっていること。iPhone 7 Plusの2つのカメラについては別記事で詳しく説明した(iPhone7Plusの2つのカメラは「スマホ革命」だ)。ここではiPhone 7のカメラ機能に言及したい。

iPhone 7のカメラの進化を大きく分けると、「明るさ」「ワイドカラー」、そして「セルフィー」の3点だ。「明るさ」はレンズの進化だ。iPhone 7の新しいレンズは、f2.2からf1.8へと変更された。一般に、より多くの光を取り込めば、シャッタースピードが上がり、明るさが足りない場所でもぶれにくくなる。iPhone 7には光学手ぶれ補正も内蔵され、レンズの明るさと相まって、とにかくぶれにくい、使いやすいカメラとして楽しむことができるようになった。夕方の風景、雰囲気のいいお店での料理、夜景などの写真の出来が格段によくなる。この点には、大きな期待を持っていい。

iPhone 7の実機で撮影した作例

2つ目は「ワイドカラー」。iPhone 7には、アップルが開発した画像処理プロセッサ(ISP)が組み込まれており、0.25秒の間に1000億回の処理をこなし、被写体やシーンを解析しながら、適切な明るさや色味を再現する。その効果により、これまでよりもより多くの色を記録することができるようになった。アップルは「ワイドカラー」という言葉を使っているが、これまでのsRGB色空間よりさらに広い、シネマ標準のDCI-P3をサポートする。

これに合わせて、25%明るく、P3の高色域に対応したディスプレーを搭載した。色の見え方は人によって異なることをあらかじめ断っておくが、筆者にとっては、赤と緑の色味がより豊かになったように感じられた。

そして700万画素に強化されたセルフィー用FaceTime HDカメラでも、P3の豊かな色再現を実現する点は、特に女性にとって喜ばれる機能となるだろう。

iPhone 7もiPhone 7 Plusも、多くの人々がiPhoneに期待していたデザインの変更という進化はなかった。しかし、息を飲む仕上がりのジェットブラックの追加は、多くの人を惹きつけることになるだろう。

iPhone 6ユーザーは満足できるはず

2年前のiPhone 6ユーザーにとっては、高速な処理性能、光学手ぶれ補正と明るいレンズによる「ぶれない」カメラ性能、高画質化されたセルフィー、そして大幅なバッテリー持続時間の向上、さらに、同じ価格で倍の保存容量が得られ、大変満足することができるはずだ。

また、iPhone 6 PlusやiPhone 6s Plusのカメラ性能に期待して選択していたユーザーも、iPhone 7の新しいカメラには納得がいくだろう。もちろん、iPhone 7 Plusというさらに魅力的な選択肢はあるが、総じて、非常に手堅い進化と、よく考えられた使い勝手を備えたスマートフォンと評価することができる。

アップルはスペックでの他社との比較を避けている。A10 Fusionのような省電力コアはAndroidデバイス向けに2~3年前から見られているし、防水スマートフォンもおなじみとなったし、ヘッドフォン端子なしのスマホもすでに存在してきた。

アップルがiPhone 7で目指すのは、今までと変わらない快適さで、新たなテクノロジーのメリットが得られるようになることだ。これを体現する高いスタンダードを、iPhone 7で体験することができるだろう。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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