ホンダ「新型フリード」はどう進化したのか 初のフルモデルチェンジを最速で徹底解剖

拡大
縮小
リアゲートの開口部は低い

スライドドアも、開口幅は旧型より20mm広い665mm、高さが40mm拡大した1165mm、ステップの高さは15mm低い390mmとなっており、乗り降りもしやすくなったそうだ。このうちスライドドアのステップ高はシエンタのほうが低いようだが、リアゲートの開口部は低く、シートアレンジの多彩さでも上回るなど、後発だけあって優位な部分が多い。

パワートレインはガソリン車、ハイブリッド車ともに1.5Lで、ここまでは旧型と同じだ。しかしフィット同様、ガソリンエンジンは直噴化され、ハイブリッドシステムはアトキンソンサイクルを用いたエンジンにモーター内蔵7速デュアルクラッチトランスミッション(DCT)の組み合わせになった。

JC 08モード燃費はガソリン車が19km/L、ハイブリット車が27.2km/Lで、ハイブリッド車はシエンタと同じ、ガソリン車はやや下回る。シエンタよりやや重いボディが影響しているのだろうか。しかしこれは2WDの話であり、4WDではハイブリッドが選べるフリードが圧倒的に有利だ。

注目したいのはハイブリッド車のモーターで、大同特殊鋼と共同開発した、重希土類を使わないネオジム磁石を採用している。レアアースの中でも重希土類は、中国以外ではほとんど産出していない物質であり、政治問題などで供給に影響が出やすい。賢明な切り替えと言えるだろう。

走りにも力を入れている

さらに新型フリードでは、ミニバンではあまり話題に上らない走りにも力を入れている。

特にエンジニアが力を入れたのはリアサスペンションで、部品や取り付け箇所の剛性を強化した一方で、取り付け部分のブッシュには液体封入タイプを採用することで乗り心地も向上させたという。フロントサスペンションはロールを抑え、ステアリングレスポンスをクイックにしてある。

安全面では、衝突軽減ブレーキ、歩行者事故低減ステアリング、アダプティブクルーズコントロール、車線維持支援・逸脱抑制機能などを含めたホンダセンシングを装備した。トヨタ・セーフティセンスCを搭載したシエンタともども、トレンドに沿った内容と言えるだろう。

ここまでシエンタを比較対象に置きつつ新型フリードの解説を進めてきたが、個人的に興味があるのはフリード+のほうだ。国産車には直接のライバルがいない、孤高の存在であるが、車いす利用者の移動からキャンプ場での車中泊まで、クルマが持つさまざまな可能性を教えてくれる貴重な存在である。こういう車種を引き続きラインナップした判断にホンダイズムを感じる。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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