日本の革新技術は、高いインフラ技術が支える ペルラン・仏デジタル経済担当相が来日

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――日本と欧州連合(EU)は経済連携協定(EPA)の話し合いを始めることを宣言しました。

フランスの中小企業の立場は。自由貿易で求められるのは、特に公共市場へのアクセスへの平等。「相互性」を伴うことが重要です。

日本企業にとってはかなり厳しいでしょう。それはフランスの中小企業にも同じことです。職人仕事をする会社とソフトウエアの会社では利害が異なって当然ですが、日本で製品を流通させたり、事業を立ち上げたりするのが難しいといった状況に直面するかもしれません。必要なのは非関税障壁の撤廃。「相互性」を念頭に置いて交渉するのが大事です。

ロボット工学領域では日仏連携進む

――日本のイノベーティブな企業に、将来、フランスで事業展開してもらおうとしていますが、そうした日系企業にとってフランスは今、好ましい状況といえるのでしょうか。

はい。たとえば、ビデオゲームの領域では海外で非常に高い評価を受けています。しっかりとした教育機関も存在し、3Dやアニメーションの分野では極めて強いといえるでしょう。フランスの品質の高さは世界中に知られています。

ビデオゲームの分野で働く他国の人にとっては、フランス企業との合弁やパートナーシップ締結への興味があるはずです。

ロボット工学の領域では日仏の連携が進んでいます。日本は同領域で先進的な技術を持ち、ハードウェア生産では先を行く存在。これに対して、フランスにも優秀なエンジニアがいます。共同作業は極めて補完性が高い。

仏企業は日米両国よりも高い競争力を備えています。これも、拠点を構えるかどうかを決める際にはとても大事な判断要素になります。そのうえ、労働力の質もよく、輸送インフラも非常に効率的です。

――フランスの大臣として韓国を訪れ、どんなことを感じましたか。

40人弱のジャーナリストが同行しており、くつろいだ雰囲気の旅行ではなく、公式訪問でした。それでも、感動的で、本当に心のこもったもてなしを受けました。

――アジア系ではフランス初の大臣ですね。

ドイツにもベトナム系の産業大臣がいますよね。歴史は変わったのです。自分の場合、風貌はアジア系ですが、アジアのコミュニティを代表しているわけではありません。文化的な多様性を兼ね備えているわけではなく、あくまでもフランス人です。あるいは、フランス人よりも……。むろん、アジア系で初の大臣であることは間違いありません。それはフランスのアジア系社会に大きな影響を与えるでしょうが。

松崎 泰弘 大正大学 教授

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まつざき やすひろ / Yasuhiro Matsuzaki

フリージャーナリスト。1962年、東京生まれ。日本短波放送(現ラジオNIKKEI)、北海道放送(HBC)を経て2000年、東洋経済新報社へ入社。東洋経済では編集局で金融マーケット、欧州経済(特にフランス)などの取材経験が長く、2013年10月からデジタルメディア局に異動し「会社四季報オンライン」担当。著書に『お金持ち入門』(共著、実業之日本社)。趣味はスポーツ。ラグビーには中学時代から20年にわたって没頭し、大学では体育会ラグビー部に在籍していた。2018年3月に退職し、同年4月より大正大学表現学部教授。

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