“スキルアップ教”にハマる中国の若者たち 「個人事業主」志向が強い、中国8000万人の若者たち

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この「ホワイトカラー」に芽生えた「個人事業主」という意識のシフトをとらえることが、中国のポテンシャル人材と付き合うに当たって重要なことだと見ています。

そして、みんなが「個人事業主」という意識を持っているからこそ、ベンチャーにも優秀な人材を確保するチャンスがあります。個人のこういうスキルが身に付くということをしっかりアピールすることができれば、いい学生やいい人材が来てくれます。

実際、われわれの游仁堂(Yo-ren Limited)はベンチャーですが、マッキンゼー出身者が中心なので、わが社で働けばマッキンゼー的な考え方、たとえば「ロジカル・シンキング」などのトレーニングが受けられますし、小さい所帯なのでフィードバックも頻繁にあります。それが将来自分のステップアップに必要だと考える人は、先のランキングの人気Top30の会社とわが社を同じ天秤にかけてくれます。

実はこの部分、研修やOJTがしっかりあって、社員に対して仕事に対するかかわり方やプロフェッショナリズムを教え込むという日系企業のカルチャーは、中国でもっと高く評価されていい点です。

リクルートでの意外な経験

例えば、私の前職のリクルートは、営業スキルを徹底的に鍛えるところですが、ひとつ印象深い事例がありました。事業立ち上げのために日本から派遣された営業のトップは、日本でも厳しいと評判の人でした。言葉も通じない、価値観も異なる中国人の社員に対しても、容赦なく日本と同じ厳しいやり方で営業のノウハウをたたき込みます。残業も多く、夜9時、10時まで働くのは当たり前で、怒られ方も半端ではありません。

見ているほうがハラハラするぐらいなのですが、やがて彼が他の拠点を立ち上げるために異動することになると、驚いたことに、普段は恨み文句ばかり言っていた営業たちが、号泣して彼を送り出したのです。なぜか。「彼についていって、学ぶことが多かった」「これで営業としてどんな会社にでも行ける」「彼には大変、恩義を感じている」。みんな口をそろえてそう言っていました。

彼らは自分を鍛えてくれる人を求めているのです。スキルアップできるなら、どんなにつらいことでも受け止め、伸びていこうとしている。むしろ、修行させてくれる人に感謝をします。

残念ながら、日系企業の研修やOJTが優れていることは、社内の情報にとどまっており、外部に十分伝わっていません。一方、日系企業の意思決定の遅さや昇進の壁などの問題は、外部からも見えやすいため、日系企業は非常に損をしています。もっと日系企業のよさを能動的に伝えていったほうがいいでしょう。

ただ、研修とOJTの素晴らしさを伝えるだけでは、おそらく限界があります。大学生に向けてならまだ効果的ですが、中国では新卒がいちばん魅力的な人材というわけではありません。中途にこそ能力の高い人材がいるのです。

そんな彼らには、「個人事業主」として、エキスパートとしてひとつの事業を任せきることをアピールするのがやはり有効です。それが彼らにとっての成長であり、まさに「個人事業主」の志向性で、門をたたいてくることもあります。

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