中高生限定「ゴルスタ」騒動が示した本当の闇 救われない子供たちは、たださまよっていく

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中高生だけを集め、そのプライバシーをそこまで把握して一体何をしようとしていたのか、このアプリは中高生がそこまでのプライバシーを売り渡す見返りに手に入れたいと望むほどのものだったのか。だが当の中高生たちは、登録時に自分たちへ要求されているものが何であるか、実はまったく理解できていなかっただろう、とも思われるのだ。

思想統制レベルの強権ぶり

しかも、ゴルスタ終了のきっかけとなったツイッターのゴルスタ批判が殺到したのは、「垢BAN」と呼ばれるルール違反者アカウントの凍結や、そのペナルティとして運営への協力的な態度を誓わせる「反省文提出」を求めるなどの強権的な運営方針だ。

その運営手法が大きな問題になった(写真:xiangtao / PIXTA)

安全・健全な利用を求める規約の違反ならまだ納得がいくものの、運営方針に批判的な発言ポストや同意(いいね)の痕跡を見つけたというだけで即座にアカウントを凍結、それに不満を持ったユーザーがアプリ外のツイッターなどで批判を展開すると、「◯◯学園◯◯さん、あなたの発言を見ていますよ」「我々も侮辱されたものですね」「『威力業務妨害』で警察に通知します」などと公式アカウントが公開でツイートし、中高生たちは震え上がった。

その思想統制を彷彿とさせる理不尽な運営ぶりを知った大人たちからは「カルト宗教のようだ」「中高生をマインドコントロールしている」との感想が漏れる。運営公式アカウントの不安定な日本語、未熟な中高生たちのあおりを受けて明らかに感情的に返答する様子に、当のユーザーよりも周囲で傍観する多くの大人たちが「このSNSはアウトでは?」と違和感を覚えた。

何よりも、「中高生限定」として大人を排除していたクローズドのSNSをようやく外部から大人がのぞき込んだとき、そこに集まっていたのは”学力が相対的に高くない子どもたち”だった。

筆者は長い間、教育や子育て分野での執筆を続けてきたが、ゴルスタの運営会社であるスプリックスの基幹事業である「森塾」という個別指導塾の存在は、まったく視界の外だった。ちょっと調べてみると、小中高生を対象に学生アルバイト講師が1対2で指導するサービスが売り。授業料も他塾に比べて安く、また受験を目的とするよりも学校授業の補習レベルでのニーズが高いようにみられる。進学実績を大々的には公表していない。

ゴルスタは、森塾に通う子供たちが使い始めて普及したのだろうか? 中高生のネット事情に詳しいITコンサルタント・K氏はこう語る。「違います。ゴルスタは当初から中の下ランク以下の学力しか持たない、しかも塾に行かない、親も塾に行かせる発想を持たないような中高生層をターゲットしたコンテンツで構成し、投下されたサービスだったのです」

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