「人口減」は、日本が再成長するための武器だ 社会的構造改革を進める条件はそろっている

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──女性活用も喫緊の課題です。

女性が男性並みに仕事をした場合、GDP(国内総生産)の伸び率にどれだけ反映できるかを試算している。要は倍増になる。男女の就業率の差が半分になるだけでも、押し上げる力は大きい。以前は女性の活躍推進を経済問題ではなく、人権問題や社会福祉問題の観点からとらえる見方が主流だった。お尻に火がつかないと、思い切った施策が出てこない。

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──管理職の女性比率といった数値目標がいわれます。

情報開示をするのは一歩前進。何が起こっているかを知ることができる。ただ、期待はしているが、どこまで企業が変わっていくか。経営層、ラインマネジャーのメンタリティまではわからない。まだ懐疑的なところがある。

不正会計の東芝にしても、ガバナンスに対して形は整えていた。だが、機能しなかった。メンタリティでの変化がなかったのではないか。うまく女性を活用している会社の収益が向上し、さらに日本経済の活性化につながるかは、経営者、ラインマネジャーのメンタリティがどこまで変わるかに懸かってくる。

女性を含めた多様な人たちがビジネスに参加することでダイナミズムが生まれ、それがイノベーションにつながり、そして会社業績に反映する。そういうロジックで動きうるのか。とりあえず数字を整えるというわなに陥ってはいけない。

ヒト、モノ、カネはそろっている

──ヒトに加え、モノ、カネの変化も必要?

日本のイノベーションの力はなかなか具現化できていない。特許で比較すると、日本の技術力は世界ナンバーワンといってもいいぐらいだ。ところが、それを商品化できるか、というところで大きな疑問符がつく。イノベーションの具現化が進まなければ労働生産性が上がらない。

イノベーションを具現化してスケールアップする。そこのシステムに問題がある。一つはおカネ。リスクマネーが少ない一方、中小企業にはゾンビ会社が多すぎて、資金が回ってこない。

──今、金融は超緩和、マイナス金利です。

おカネは極めて潤沢なはず。経営の3要素、ヒトとモノとカネがそろっているのに、社会システムの問題でうまく結果を生み出せていない。それを融合的に育みうる環境を作っていく。それも8割はできている。あと2割について後押しすればガッと伸びるところまで来ている。

──変化すると楽観できる?

そんなに悲観しなくていい。ハードルがいくつもあるが、それを乗り越える必要条件はしっかりそろっている。

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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