池袋駅とサンシャイン結ぶ「LRT」構想の全貌 "新型路面電車"が狙う、楽しい乗り物とは

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とはいえ、池袋駅とサンシャインシティの間は歩いて移動できる距離だ。高野区長自身も「池袋からサンシャインまでなら歩くほうがかえって早い」と認める。必要性が乏しいと思われるエリアになぜLRTを導入するのか。

高野氏は言う。「普通のLRTを走らせても人は乗らない。人を呼び込むためには乗って楽しい“トラム”を作らないと」。つまり、豊島区が目指しているのは、観光列車的な乗りものなのである。

富山市内を走るLRT(写真:記者撮影)

そもそもLRTは路線バスと地下鉄の間に位置付けられる中規模輸送的な交通手段だ。路線バスでは対応しきれない需要をLRTで代替するというのが自然な流れである。全国の都市で進んでいるLRT計画は、バスや自動車に代わる移動手段であることが強調されている。しかし、多額のコストをかけても「地域の住民が日常的に利用するのか」という点で、合意形成がつまずいてしまう。これこそLRTの導入が進まない理由だ。

その点、池袋は、住民の足という交通論ではなく、池袋にやってくる人が観光目的で乗るという点を前面に押し出した。「池袋にはアニメファンが多く訪れるので、アニメ(ラッピング)電車を走らせてもいい」と、高野区長は構想する。

2階をカフェにした列車

「観光目的であれば、日本にこれまでなかった形のものを作らなければ乗ってもらえない。そこで2階建て電車を提案します」。池袋で不動産業を営む後藤文男氏はこんなアイデアを披露する。路面電車ファンの後藤氏は、英国の地方都市ブラックプールを走る昔懐かしい路面電車の写真をカメラに収め、写真集『ファンタスティックトラム』を今年4月に出版した。

LRT導入による池袋の活性化を目指す「池袋の路面電車とまちづくりの会」の事務局長を務める溝口禎三氏もこの写真集を見ながら「2階はカフェにして、ビールを飲みながら池袋の町を見物する。こんな楽しい列車がいいなあ」と夢を描く。

2階建て路面電車というアイデアに無理はないのか。「日本の法規上、架線集電式の2階電車では道路の高さ制限に引っかかってしまうので、バッテリー式の架線レスの電車にする必要がある」と後藤氏は指摘。「充電は池袋の駅前に停車中にパンタグラフを上げて行い、車体の高さは2階バスを基準にすれば法的な面はクリアできると思う」。

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