ミスの多い人がわかっていない集中力の本質 散漫になりがちな注意力も上げられる

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このことを世界に知らしめた有名な実験があります。「選択的注意」テストと呼ばれるもので、ハーバード大学の研究室が作成した動画による実験です。この動画では、黒いシャツと白いシャツを着たチームがそれぞれバスケットボールを持って、狭い場所で入り乱れながら自分のチームメイトにパスしていきます。

実際に動画がネット上で公開されています。

 ハーバード大学特別実験「選択的注意テスト」

 

1分ほどの動画なので、続きを読む前にテストされるといいでしょう。

この動画の冒頭では、視聴者はこう問いかけられます。

「白いユニフォームのチームが、何回パスをするか数えてください」

実はこの質問は動画を見る人の注意をそこへ誘導させるため。この動画の実際の趣旨は、バスケットボールとは一切無関係のゴリラの着ぐるみに気づいたかどうかを試しています。

動画を見ればわかりますが、ゴリラは画面の端で見切れているといったレベルではありません。パスをする人たちの間を縫って画面の中央まで堂々と歩いてきて、わざわざ目立つような仕草までします。しかし、ほとんどの視聴者はその存在に気づかないのです。

私もはじめてこの動画を見たとき、まったく気づきませんでした。

人が注意を払える対象は限られています。あるものに注意を払うと、ほかのものが見えなくなるのです。

「不安」や「心配」があなたの注意を奪っている

アテンションミスを頻発する人は共通して、この有限な「注意」の浪費家です。ムダ遣いしすぎて本来注意を集中させるべき仕事に割く十分な空き容量が残っていません。

では何に注意をとられているか。

たとえば、職場であればスマホ。仕事中、無性にスマホを開きたくなったことはありませんか? ゲームが好きな方はもちろん、メールをチェックしたくなったり、FacebookなどのSNSを見たくなったり、気になるニュースを見たくなったり……。ついつい手が伸びるのを我慢しているとき、注意力の一部はスマホやその中のアプリなどに向かっています。

また、スマホのような「外」だけでなく、「内」にもとられていることがあります。つまり、あなたの心情への注意です。とくに浪費するのが「不安」や「心配」、「後悔」など。

これらはいったんハマるとどんどん増幅し、気づくとすべての注意力が占拠されていた……なんてことが起きるからです。

次ページ単純な作業に慣れると注意力は増す
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