民進党代表選候補の「経済政策」を総チェック 結局、日本経済「最大のリスク」とは何なのか

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前原氏は「財政民主主義改革の断行」との文言だけで、チラシからは具体的な政策は不明である。共同記者会見でも財政政策については言及していないが、消費増税に対するスタンスなどは蓮舫氏と同様と思われる。

玉木氏は、「財政法を見直してこども国債を年5兆円発行することで、教育・子育ての完全無償化」という具体案を提示している。国債を年間5兆円発行しその分政府支出を拡大すれば、その分経済成長率を押し上げる。ただ財源について明らかではなく、「子ども国債」発行の前提には消費増税などが前提になっている可能性が高い。2014年の消費増税時には社会保障はほとんど充実しなかったが、これと同様、増税が先行し歳出が後回しになれば経済成長を押し下げる。

時期尚早な消費増税は失政である

「教育・子育て完全無償化」は理想としては望ましいと筆者は考えるが、それを実現するために、「こども国債」を発行する必要性は、政治的メッセージというだけだと筆者は理解している。新たに国債枠を作らなくても、赤字国債発行を増やせば経済的な効果は同じである。そして、社会保障を充実させるために政府歳出を増やすには、これまで安倍政権が取り組んできたような成長押し上げ策によって税収を底上げすることが必要だが、そうした政策をどのように評価しているかは明らかではない。なお、ツイッターなどで同氏は「金融緩和策は黒魔術」と発言している。

実際には、2009-2012年の民主党政権下ではデフレ深刻化が続き財政赤字はほとんど改善せず、2013年にアベノミクスが起動してから財政赤字が縮小した(財政赤字の縮小の半分以上は、消費増税以外つまり名目所得の底上げによるものである)。その後は2014年度の消費増税のネガティブ・インパクトが大きく、同年度から成長が落ち込み、2015年以降はインフレ率低下と成長停滞で税収の伸びも鈍化した。デフレ脱却が完遂しないうちに増税を行う弊害は大きいだろう。1997年と異なり、強力な金融緩和政策の後押しで消費増税の悪影響はかなり相殺されたが、時期尚早な増税は財政健全化を妨げる失政と言えるのではないだろうか。

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