慶応EVベンチャーに集った100社の思惑 量産化は遠くても、未来へ“保険”かける

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混戦模様の中で、技術力の向上や環境の整備が進めばEVが本命になることもありえない話ではない。EVの最新技術開発にかかわることで、次世代エコカーへの間口をできるだけ広く取っておきたいというのが、シムドライブに資金を拠出している企業の本音だろう。2000万円は“保険”代わりでもある。

また、EVの直接的な生産にかかわらない企業にもメリットがある。3号車「シム・セル」の開発に資金を提供をした26機関の1つである積水ハウスは、「スマートハウスの実証実験をする中でEVを活用しようとしたが、既存の自動車メーカーはあまり協力的でないと感じた。ならば、自分たちで開発すればいいと考え参加した」(石田建一執行役員)という。

マレーシア企業が登場も具体的計画は示されず

シムドライブは、それでも「量産」という2文字を前面に打ち出している。3月27日に東京都内で開かれた発表会では、マレーシア企業が登場。「3年以内にシムドライブの開発車を量産する」とトップが宣言したが、具体的な計画は示されておらず、実現に向けた課題は多いだろう。

次世代EVの開発を続ける資金を集めるためには、「量産」というお題目を掲げ、派手なパフォーマンスも必要なのかもしれないが、少しチグハグな印象もあった。ただ、参加企業はすぐに量産が難しいという本質を、案外わかっているのかもしれない。

(撮影:大澤 誠)

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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