慶応EVベンチャーに集った100社の思惑 量産化は遠くても、未来へ“保険”かける

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今やガソリンエンジンのコンパクトカーでも、満タン給油で800km程度走行できる時代だ。EVがこれに近付くには、バッテリー性能を飛躍的に向上させなければならないが、すぐに実現するのは難しい。充電インフラについても、政府予算の補助金はあるがEVの普及が見えない中で、思い切った投資をする企業は少数派である。

第4号車の開発に着手

シムドライブは開発企業なので、量産化となれば大企業による大型の設備投資やサプライチェーン(部品の供給網)の整備が必要となるが、現時点の状況ではそれに踏み切る企業は見当たらない。シムドライブが目論む今後数年でのEV量産は「画に描いた餅」と言っていい。

シムドライブが開発したEV「シム・セル」の正面

それでもシムドライブは、第4号車の開発にも取りかかっている。そもそも、シムドライブは開発費として1口2000万円を企業や自治体などの参加機関から集めて、EVを開発している。これまでの参加企業は100社以上。三菱自動車やいすゞ自動車といった完成車メーカーをはじめ、東レや旭化成、クラレなどの化学メーカー、三菱商事や三井物産などの総合商社、仏プジョー・シトロエンや独ボッシュといった海外の自動車関連企業まで、蒼々たる顔ぶれである。

量産化のメドがまるで立たないのに、これだけの企業が集った理由はいったい何か。それは現時点で、次世代エコカーの本命が決まっていないからだ。自動車の動力源としてこれまで主流だったのはガソリンエンジンだが、エネルギーや環境問題を考えれば、ガソリンエンジン車が隆盛の時代はいずれ終わる。

次に来るのは何か。ここ数年は、トヨタ自動車「プリウス」「アクア」の大ヒットに代表されるように、エンジンとモーターを併用して走るハイブリッド車(HV)の人気が急速に高まっている。ただ、HVでさえも、次世代エコカーの本命になるかどうかはわからない。最近では燃料電池車(FCV)も15年にも実用化される方向であり、複数の選択肢がある。

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