米バイオ創薬のアムジェン、日本進出の勝算

アステラスと組み、第一弾は高脂血症治療薬

高橋栄一(たかはし えいいち)/1964年北海道室蘭市生まれ。1991年、慶應義塾大学医学部卒業、1995年同大学院博士課程修了。Ph.D.、MD。専門は内科、循環器。2002年ファイザー入社。マーケティング部門でリピトール部長、循環器グループ長を務めた後ファイザーグローバルのアジアパシフィック地域メディカルトップも務めた。この間に青山学院大学大学院でMBA取得。2013年6月、アムジェン・デベロップメント入社、同年10月より現職

米国アムジェンとアステラスは2013年10月に合弁でバイオ創薬企業アステラス・アムジェン・バイオファーマを設立した。アムジェン日本進出の橋頭堡だ。設立3年足らずだが、2016年1月には高コレステロール血症(高脂血症)治療薬「レパーサ」の承認を受け、4月から販売を開始した。

アムジェンは1980年に設立されたバイオベンチャーの草分けで、今や売上高2兆円にのぼる世界最大のバイオ製薬会社。同社と日本との関係は実は古く、設立まもない1984年にキリンホールディングスとの合弁を米国に設立し、腎性貧血症治療薬などを日本やアジア向けに共同開発している。1992年には単独で日本にアムジェン株式会社を設立したが、2008年に武田薬品に開発中の医薬品候補を譲渡し、いったん撤退した。当時、譲渡総額が最大900億円に上ると騒がれたほどの大事件だった。

それから5年、今度はアステラスと組み、「アムジェンの日本再上陸」と注目を集めた。ただ、アステラスとの連携は2020年までの時限付き。それ以降はアムジェンの100%子会社になり、単独での日本侵攻策を練ることになる。

アステラス・アムジェンの高橋栄一社長に、日本戦略を聞いた。

高リスクの家族性コレステロール血症を治療

――「レパーサ」の発売から5カ月が経過した。

「レパーサ」はハイリスクの高コレステロール血症治療薬で、血中のコレステロールを肝臓に取り込む機能を高めるまったく新しい機序の抗体医薬品で、皮下注射で投与する。先行薬であるスタチン(飲み薬、メバロチンやリピトールなどの化合物医薬品)との併用が基本だ。

スタチンでは十分に効果が出ないハイリスクな患者さんが対象で、高脂血症の患者が数百万人いるうち8万~9万人と限られる。日本には治療が必要なのにもかかわらず治療されていない人がまだまだ多い。スタチンを処方されていても、悪玉コレステロールの発生をきちんと抑制できている患者さんは全体の半分程度。私たちはそのなかでも家族性高コレステロール血症の患者さんに注目している。

――家族性高コレステロール血症(FH)とはどんな病気か。

家族性高コレステロール血症は遺伝性の病気で、200~500人にひとりが発症するといわれている。若いときから総コレステロール値が高く動脈硬化症を起こしやすい。両親からこの遺伝子(FH遺伝子)を受け継ぐと特にリスクが高い。片方だけから遺伝子を受け継いだ場合でも、やはりハイリスク。40歳以下の若い心筋梗塞患者のうちFHの人は37%にのぼる。

ところが、FHのリスクはあまり知られていない。アキレス腱の肥厚などいくつかの典型的な所見のある患者さんは別として、見極めが難しい。家族性であるという認識がないうちに通常の高コレステロール血症薬を処方されていると、真の病因であるFHがわからなくなる可能性もある。この、FHというリスクを広く知ってもらい、患者さんに治療を届ける責任をしっかり果たしていきたい。

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