茨城県土浦市の"理想農園"は何が違うのか 顔の見える関係が野菜を美味しくする

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つくり手の想いの詰まった久松農園の野菜は農協や卸売業者を介さず、飲食店や消費者のもとへ直接届けられる。口にした人の間で「生命力を感じる」「力強い味」などと評判を呼び、いまではリピーターが後を絶たないほどだ。

“旬”を迎えたオクラの“滋味”

取材に訪れた8月初旬、畑の一角では、「走り(“旬”のなかでも最初に出始めるもの)」を迎え、大きく育ったオクラがたくさん実っていた。

「大きくても弾力があるでしょう?生命力があるいまが伸び盛りだからです。この時期は、一晩で5cm伸びることもありますよ」と教えてくれたのは、久松農園のメンバーの一人である十川(そごう)英和さん。

虫害や病気は有機栽培では避けられないが、その試練を乗り越えたオクラは、真夏の日差しをたくさん浴びて力強く育つという。

「『走り(“旬”の時期の始まり)』のオクラはジューシーで若々しい味わいです。一方、『名残り(“旬”の時期の終盤)』の季節になると、時間をかけてじっくり育つ分、味が凝縮されます。同じ一本のオクラの木でも時期によって味が変わっていくんです。そうやって季節の移り変わりを感じて楽しんでほしいですね」と話してくれた。

その場で採って食べさせてくれたオクラは、生のまま食べても筋ばったところがなくしなやかな歯応えで、青々しい旨みが口の中に広がっていく。

最近は“甘さ”だけを売りにする野菜もたくさん出ているが、単純に甘いだけではなく、野菜がそれぞれにもつ旨みや苦味、味わい深さ、香り高さを含んだ複雑な味わいこそが、久松農園が目指す“滋味”なのだと十川さんはいう。

栽培効率を落としてでも“旬”の露地栽培にこだわる理由は、この“滋味”のためなのだ。

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