寝台夜行列車は、こうすれば再生・活躍できる 需要がないのが廃止の理由ではなかった

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「サンライズ瀬戸・出雲」は、A個室寝台“シングルデラックス”やB個室寝台“サンライズツイン”の利用率が高い反面、現在は個室B寝台“シングル”が売れ残ることが多いという。「サンライズ出雲」は、出雲大社を訪問する熟年夫婦やカップル、女性同士などに多く利用されており、B個室寝台“シングル”や“ソロ”を減らす代わりに、“スイート”や“ロイヤル”に置き換えれば良いと感じる。

クルーズ船のような価格設定も

寝台特急サンライズ(写真:はる / PIXTA)

さらに1人用個室よりも2人用個室のほうが、幾分部屋が広くなるだけで、車両1両当たりの生産性が向上する。そのため2人用個室として製造し、1人で使用する場合は、クルーズ船のように3割引きで販売するなどの工夫があっても良いかもしれない。現在は料金に関する規制が「届出制」に緩和されているため、JRの判断だけで柔軟に対応が可能なのである。

「個室寝台」「食堂車」「シャワールームと設備」「ロビーカー」は、高速バスや航空機、新幹線では、絶対にまねができないサービスである。北海道新幹線の開業を契機に、「北斗星」「カシオペア」が廃止に追い込まれたが、北海道新幹線と「北斗星」「カシオペア」とでは、客層や利用目的が大きく異なるため、両者は共存できる。

寝台夜行列車は、昔のように「単なる移動手段」ではなくなっており、その列車に乗車することが目的になっている。「サンライズ瀬戸」は、いまだ移動手段という要素も残っているが、「個室でくつろぎながら旅行したい」という人々のニーズをつかんでいる。「ニッチ」といわれる領域でほかの輸送モードではできないサービスを提供すれば、潜在的な夜行旅客需要が見込めることから、必ず復活すると信じている。

堀内 重人 運輸評論家

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ほりうち しげと / Shigeto Horiuchi

1967年生まれ。立命館大学経営学研究科博士前期課程修了。運輸評論家として執筆や講演活動、ラジオ出演などを行う傍ら、NPOなどで交通問題を中心とした活動を行う。著書に『ビジネスのヒントは駅弁に詰まっている』(双葉新書)、『観光列車が旅を変えた: 地域を拓く鉄道チャレンジの軌跡』(交通新聞社新書)、『地域の足を支える コミュニティーバス・デマンド交通』(鹿島出版会)ほか。

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