配偶者控除見直しで焦点となる増減税の境目 税収中立となる控除税額の金額を独自試算

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配偶者控除の見直しで重要なポイントは、税収への影響もさることながら、女性の働く意欲を削がないようにすることだ(写真:xiangtao/PIXTA)

8月末に、各省庁からの来年度予算の概算要求が提出され、来年度予算編成に向けて動き始めた。その中で、今秋にも所得税改革に着手するか注目されている。消費増税は再延期され、法人税改革は東洋経済オンラインの本連載の拙稿「法人実効税率を引き下げると何が起こるのか 恩恵を受ける企業と打撃を受ける企業がある」でも触れたように昨年末で議論が一段落しており、我が国の基幹税で改革に未着手のままとなっていたのが、所得税である。

所得税改革が議論され始めると、またぞろ増税かと思われるが、その点はすでに「経済財政運営と改革の基本方針2015」(骨太の方針2015)で「今後の改革の中心となる個人所得課税については、税収中立の考え方を基本として、総合的かつ一体的に税負担構造の見直しを行う。」と閣議決定されている。今回の所得税改革は、あくまでも税収中立が前提である。

何のための配偶者控除の見直しか

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では、所得税改革の何が焦点か。それは配偶者控除である。配偶者控除に焦点があたることとなった経緯の詳細は、東洋経済オンラインの本連載の拙稿「配偶者控除見直し「3つの案」はどれが有力か 次の焦点は「若い世代」が納得できる税制改革」に譲るとして、ここではこの改革の狙いと家計に与える効果について言及しよう。

配偶者控除の見直しで、最も重要な政策効果は、女性の働く意欲を阻害しないことである。税制だけで女性の就労意欲を促進することは難しいが、働く女性に税制面から少なかった恩恵をより厚くすることはできる。恩恵とは、露骨にいえば減税である。とはいえ、前述の通り、所得税改革全体としては税収中立とすることが前提だから、誰かに減税すれば誰かに増税をせざるを得ない。

これを正当化する考え方は、所得税による所得再分配機能の回復・強化である。わが国の所得税制は、これまで累進税率を緩やかに(フラット化)してきたことで、所得税によって所得格差を是正することがあまりできていない状態となった。だからといって、グローバル化の中で日本だけが累進税率をきつくして最高税率を60%にも75%にもすれば、海外へ人材や資金が流出する。

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